2013 Fiscal Year Research-status Report
民事責任法と人・家族――その変容と現代におけるあり方――
Project/Area Number |
25780067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白石 友行 三重大学, 人文学部, 准教授 (00571548)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民事責任 / 不法行為 / 人 / 家族 |
Research Abstract |
平成25年度においては、主として、人・家族が関わる民事責任法の個別問題について、日本とフランスの判例及び学理的な議論を、社会的、歴史的、法学的文脈と関連付けながら分析する作業を行った。より具体的に言えば、日本法及びフランス法について、人・家族の捉え方と関連する民事責任法上の様々な問題を抽出した上で、主として、人・家族の捉え方が具体的な解釈や適用に与える影響という観点から、かつ、通時的な視点を入れつつ検討した。これによって、同じく人・家族の捉え方がかかわるはずの民事責任法上の構想や解釈でありながら、人・家族の捉え方が反映しているものとそうでないものがあること、また、問題となる局面によって、あるいは、当該判例や学理的議論が生み出された時期によって、人・家族の捉え方が異なっている部分もあること、その結果、人・家族の捉え方についての認識が民事責任法の個別問題に与える影響の仕方も異なっていること、これらの事情のために、人・家族が関わる民事責任法上の諸問題につき包括的・体系的な把握が困難となっている部分が存在することや、近年に至って新しく生じてきた諸問題に対して、これまで積み上げられてきた民事責任法上の人・家族の捉え方との接合の仕方を踏まえる形で、必ずしも十分な議論がなされているとは言えない状況にあることなどが、明らかとなったように思われる。平成25年度においては、個々の判例や学理的議論の内在的な検討に主眼を置いたことから、個別問題を中心とした分析をするに止まったが、そこでの成果は、平成26年度以降、民事責任法全体の中で把握されることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本法とフランス法を対比しながら、①民事責任法上の個別問題と人・家族との関わり方、②民事責任法全体と人・家族との関わり方、③民事責任法における人・家族と人・家族の法一般との関わり方、④「民事責任法及び人・家族」と民法学全体の傾向との関わり方を明らかにしつつ、⑤現代社会における民事責任法と人・家族との関わり方を提示しようとするものである。当初の計画では、①を平成25年度に、②及び③を平成26年度に、⑤を平成27年度に、④については全期間を通じて行うことを予定していた。平成25年度においては、①の研究に見通しをつけたが、④については、①の研究に際して読むべき文献の量が当初の予想以上に多かったこと、及び、④の研究の前提となる文献の消化に時間をとられたことから、必ずしも十分な検討を加えたとは言えない状況にある。もっとも、④については、当初の計画でも、全期間を通じて取り組むことが予定されており、かつ、平成25年度中に獲得した基礎的な知見を基礎としなければ展開することができないものであるから、本研究は、基本的には、当初の計画通り進行していると言える。従って、この点をも踏まえれば、おおむね順調に進展していると評価するのが適切である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、平成25年度の検討成果を民事責任法全体の中に位置付け、個々の場面での人・家族の捉え方の相互関係を整理しつつ、そこに不整合が存在すること、また、個々の場面での解釈技術や民事責任法の構想が特定の時代や社会における人・家族の捉え方に制約を受けている可能性があることなどを明らかにする予定である。さらに、平成26年度の後半には、これまでの研究成果を人・家族の法一般と接合する研究に着手する予定である。これは、民事責任法と人・家族の法とにおける人・家族の捉え方の異同を明らかにするための作業である。
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