2013 Fiscal Year Research-status Report
フレイト・フォワーダーの法的地位―イギリス及び英法系諸国を中心に―
Project/Area Number |
25780073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
重田 麻紀子 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 准教授 (60404977)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フレイト・フォワーダー / 国際複合一貫輸送 / 法的地位 / イギリス:オーストラリア:カナダ |
Research Abstract |
本研究は、近年の国際複合一貫輸送を背景に台頭した運送の第三当事者であるFreight Forwarder(以下、フォワーダーとする)の法的な地位ないし性質を検討し、その変貌する経済活動主体を法的に位置づけることを目的とする。筆者はすでにこの頭記研究につき、アメリカ法につき考察を行ったが、本年度は、伝統的海運国家であり、かつ英法体系の本源であるイギリスを中心に研究を行なった。 イギリスは、アメリカと異なり、フォワーダー概念の定義規定を有さず、また、その参入規制、約款規制、料金規制等の法的規制がない。そこで、根拠法のないフォワーダーの私法上の地位の考察にあたっては、判例法の検討が重要な手法であり、フォワーダーの実際の機能・業容を把握しながら検討を進めた。伝統的判決から最新判決に至る判例法の理論構成について、その社会的背景、実務実態を踏まえつつ考察し、また、判例法の考察とリンクさせて、英法上補助的法源とされる学説の検討を行なった。その結果、イギリスでは、実際のフォワーダーの業容の質的変化とともに、判例法によるフォワーダーの地位の理論構成も新たな展開があり、伝統的な代理法に基づき荷主ないし荷送人の代理人(agent)として構成されていたのが、現代では、利用運送人としての機能を果たすようになり、自己の名で実運送人と顧客の貨物の運送を契約する本人(principal)として構成する判例が現れている。また、こうしたフォワーダーの地位の識別に関しては、複数の基準を定立し個々の事案において判断されている。 本年度の成果は、研究の発展段階での中間発表として日本海法学会において研究報告を行なった。そこで得られた問題点は、理論を詰める作業を行うとともに、これまでの英米2国に関する考察を踏まえ、来年度は、豪、加など英米法系諸国を対象として、フォワーダーの法的地位ないし性質を検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、荷主と運送業者との間に介在し、第三者として運送の手配を行うフォワーダーの地位を法律的にどのように理論構成をすべきかという問題に関して、海運国家として伝統のあるイギリスを中心に、オーストラリア、カナダなど英米法系諸国を対象として、変貌する経済活動主体であるフォワーダーの法的な地位ないし性質を検討し、法的に位置づけることである。 現在までのところ、まず英法体系の本源であるイギリスに関して、判例法の検索・入手およびその分析を行ない、伝統的判決から最新判決に至る判例法の理論構成を明らかにした。また、学術書、その他論文等の検索および入手し、学説の状況を踏まえ、判例法の理解および客観的検討を進めた。 また、その研究成果は、昨秋、イギリスにおけるフォワーダーの法的地位をテーマとして日本海法学会において研究報告(単独)を行なった。右学会報告においては、実務家の弁護士、学者などから有意義な質問・意見を戴き、議論を通して新たな問題点を発見することもできた。これらの点を踏まえて、さらに検討を進めている。以上の通り、25年度の研究目的および計画に示した点は概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、イギリスの考察を踏まえ、英法系に属するオーストラリア及びカナダの2カ国を研究対象とする。現段階の資料収集を基にしていえば、2カ国のうちオーストラリアの方が研究材料は多いように思われる。そこで、研究の順番としては、オーストラリア法から研究をスタートする。 オーストラリアにおいてフォワーダーの地位は、当初、先に示したイギリスのリーディング・ケースであるJones事件をはじめとする一連の判決に影響され、フォワーダーの立場を荷送人の代理人と解釈し、あるいは、隠れたる本人法理(as an undisclosed principal)で、フォワーダーは荷送人のために海上運送人と運送契約を締結する者として法律構成されてきた。しかし、近年のコンテナによる輸送革新の中で急成長したオーストラリアのフォワーダーの実像は、本人(principal)として荷送人と運送契約を締結するのが当然であるとされており、これが、フォワーダーの地位に関する現在のオーストラリアの判例法の主流であり、学説も支持する考え方でもある。なお、カナダについても、概ねオーストラリア法と同様の法状況にあると想定しているが、この辺りは、オーストラリアの研究と並行しながら、適当な研究材料を収集して解明していく。 最終的には、わが国での法制度のあり方を提示することも目途とする。そこで、わが国におけるフォワーダーに関する資料・情報収集のため「一般社団法人 国際フレイトフォワーダーズ協会」(JIFFA)への訪問調査も行う予定である。
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