2013 Fiscal Year Research-status Report
「債権の消滅原因」の現代化に向けた基礎的研究――「決済」の法的性質について
Project/Area Number |
25780076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
深川 裕佳 東洋大学, 法学部, 准教授 (10424780)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 債権の消滅 / 金銭債権 / 決済 / 電子マネー / 弁済 |
Research Abstract |
近年,金銭の支払いによる「決済」は,さまざまな形態で行われるようになってきた。とくに,電子的な決済手段の発達は,わが国において,めざましいものがある。ところが,わが国の民法典が起草された当時には,このような現代的決済の姿を起草者はまったく想定していなかった。そこで,現在,このような現代的決済の諸手段を民法の既存の民法の法理からどのように説明することができるのか,または,既存の理論では不十分な点があり新しい理論や立法を必要としているのかということを検討して明らかにすることが,安全で確実な「決済」を実現するために不可欠となっている。 そこで,本研究において,本年度は,わが国で利用されている電子的決済手段のうち,「電子マネー」と呼ばれるものの実態を把握するために専門家からの知見を得てその多様な姿の全体像を把握することに勤めた。民法は,金銭として「通貨」(貨幣および日本銀行券)を想定しており,これ以外の「金銭(マネー)」は考慮されていない。そこで,「電子マネー」がどのような形態をとっており,また,これによって利用者(特に,消費者)にどのような問題が生じているのかということを明らかにする必要があるからである。その結果,国際的に見ればその導入は遅れたにもかかわらず,わが国における「電子マネー」は,欧米に比較しても,国民に広く浸透していることが明らかとなった。また,電子的決済手段は,このような「電子マネー」に限らずより大きな金額を扱うクレジットカードやインターネット上の決済も考慮に入れる必要があることが特に消費者保護という観点から必要となることが明らかとなった。 さらに,本年度は,これらの問題を認識した上で,これを解決するために必要となる資料を,わが国に先駆けて電子マネーを導入したイギリスに赴いて収集し,次年度以降の研究につなげる準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,専門家からの知見を得て実態を把握することを予定しており,本年度はこの計画に沿って,電子的決済として国民に頻繁に用いられている手段を把握し,その問題点を探ることができた。なお,当初は,これらの手段を類型化することまでを予定していたが,理論的な解明を行ってからでなければ,類型化の意義は小さくなるものと思われたために,これに代えて,欧米での立法および学説の議論の状況を検討する準備を行うことができたため,全体としてみれば,本年度の計画は達成できたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度(平成25年度)において収集した資料(特に,欧米における立法および学説に関するもの)を読み込んで分析を行い,理論的な解明に努める予定である。そして,その理論的解明を踏まえて,再び本年度に明らかにした電子的決済の諸手段を類型化して検討する予定である。その上で,最終的には研究成果をまとめて,論文として公表する。
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