2015 Fiscal Year Research-status Report
著作物の自由利用の確保と権利者への対価還流の両立への方策
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25780082
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (80375518)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 著作権法 / 著作権 / フェア・ユース / 著作権の制限 / 私的録音録画補償金制度 / 著作権の間接侵害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、① 私人の行動の自由、表現の自由、教育・研究等の公益といった観点から、著作物の利用が自由に行われるべき領域を明らかにしつつ、② 創作のインセンティヴを確保するために、利用の自由を確保しながらも著作権者等へ対価還流を可能とするような方策の可能性(例えば、機器・媒体に課金する補償金制度や著作物の利用システム提供者への課金)を検討し、利用の自由の確保と権利者への対価還流の両立を可能とするような、将来に向けた著作権制度のあり方への示唆を提示することを目的とする。今年度は、前年度に引き続き、論文としてまとめることができた部分から研究成果の公表を行うとともに、研究課題の調査・検討を進めた。 研究成果の公表としては、①[著作物利用の自由領域]に関して、米国著作権法におけるフェア・ユースの調査・検討のうち、フェア・ユースの主要な理論である変容的利用の理論と、市場の失敗理論の新たな展開に関する内容について論文を公表した(もしくは近日の公表を予定している)。 ②[著作権者等への対価還流の方策]に関しては、前年度から引き続き、いわゆる「著作権の間接侵害」として論じられている問題から示唆を得て、著作物利用システム提供者からの対価還流の方策を検討するとともに、私的録音録画制度に関しても調査・検討を行い、この制度を活用した対価還流の可能性と、その方策を実現するための課題と将来的な制度設計について検討を行った。なお、本研究においては、著作権者等が利用者から直接にではなく間接的に対価を還流する方策を指向しているが、このような方策には、利用への抑止効果が低いであろうというメリットがある一方で、従来の著作権法の性質や枠組みを変容する側面があることから、この点については、今後より検討を深めていく必要があると考えている。以上の検討内容についても、今後論文として公表していくことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究計画に基づき、調査・検討を進めるとともに、成果を順次論文として公表することができていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。ただし、本研究を進める上で、そもそもどのようなものが創作のインセンティヴとして機能するのか(創作のインセンティヴとしての金銭的報酬の意義と限界)という点についての検討も計画していたが、この検討事項については、知的財産制度に関する根源的な問題であることもあり、十分に掘り下げることができていない。次年度、可能な範囲で調査・検討を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の最終年度となるため、これまでの調査・検討内容を論文としてまとめ、公表していくことに重点をおく。現在の著作権法の抱えている課題を踏まえ、それらの問題の解決に向けて、日本の著作権法の解釈や立法に対する具体的な提言をなす事を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末に旅費や資料収集のための費用が必要になった場合の調整分として残しておいた予算が若干残存したことにより、次年度使用額が生じた。本研究計画の遂行や使用計画に実質的な影響を与えるものではない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、本研究課題を遂行するにあたって必要となる物品費・旅費等に充当する。
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