2014 Fiscal Year Annual Research Report
DV被害者支援における実効的な警察機能・役割の検討
Project/Area Number |
25780085
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
松村 歌子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (60434875)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / ファミリー・ジャスティス・センター / 警察 / 保護命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
DV被害者支援についての課題は、支援者側の問題、行政の運用面(法執行面)の問題、法制度の問題に大きく分けられる。 国内調査では、法はあっても行政側にノウハウがない、DVについての理解が不足している、ヒト・モノ・カネの不足、支援者が精力的に活動していても支援者の後継者や財政の問題、自立支援対策が不十分、加害者への対策が不十分、デートDVへの対応が不十分、保護命令発令の要件が限定的で使いにくいなど、どの地域でも同じような声があがった。 海外調査は、アジア初のDV法を制定したマレーシアと、DV被害者支援で先進的な取り組みを行ってきた台湾で行った。アンケートと聞取り調査を通じて、被害者支援の現状(法制度の内容、暴力の形態、暴力の社会背景、被害者支援団体の組織化の経緯、行政や民間による支援サービスの現状)を調査した。台湾及びマレーシアのDV防止法の条文検討、民間団体の活動内容と支援の哲学、行政の関わりの程度、歴史的・文化的・宗教的背景についての調査を通じて、日本の保護命令制度のあり方、支援の哲学との相違点、官と民の役割分担の課題、法改正の方向性について検討した。台湾DV防止法における職権的に通常保護命令の延長申請を認める条項など、加害者の適正手続の保障の問題が生じることが予想されるため、実際の運用について追加的調査を行う必要がある。また、マレーシアでは、宗教的な背景から刑法と連動した形でDV防止法が制定されており、被害の届け出と警察の捜査開始が保護命令の発令の要件となる。そのため、個々の警察官が独自に被害者への指導・調停している実態があり、保護命令は余り活用されていないし、被害の認知状況や通報状況などについての行政の統計資料もほとんどない。マレーシアでの被害者支援の中心的存在は民間支援団体であり、マスメディアを活用した広報啓発活動や社会教育機能、政策提言能力など見習うべき点は多い。
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