2013 Fiscal Year Research-status Report
現代フランスと欧州連合における移民政策と難民政策―課題と展望―
Project/Area Number |
25780092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東村 紀子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 研究員 (80647553)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 国際研究者交流 / フランス政府要人との対談 / 政党本部責任者との対談 / フランス / モナコ / EU(ヨーロッパ連合) |
Research Abstract |
平成25年度、報告者は、現在執筆中の論文における分析枠組みについて再検証を行い、先行研究ならびに近似する領域研究の渉猟を行うなど、科学研究費により購入した図書を十分に活用しながら研究を精力的に進めた。また、前年度までの研究内容との整合性・一貫性を再度確認し、今後の研究を進める上でも必要な情報及び加筆修正作業についての見直しを行うこともできた。 2013年度6月には、報告者が在籍する日本比較政治学会において、フランスの難民政策について特化して導き出した分析内容について報告を行った。同学会では、カナダとオーストラリアにおける外国人政策の研究者とともに、比較政治の観点からフランスの移民政策及び難民政策の動向について発表を行った。出席した研究者の方々からも、現在の政治学研究領域において非常に有益な研究を行っているとの高い評価を受けた。特に社会学領域からの分析が多くを占める同領域において、理論的かつ政治制度を熟知した観点からの分析は単にヨーロッパの地域政治だけでなく、国際政治においても多くの示唆をもたらしうる研究であるとの評価を戴いた。 さらに、2013年11月から12月にかけて、フランスとモナコに赴き、それぞれの国の移民政策・難民政策に関わる政府の政策決定者と面会し、本研究における仮説の実証性をより確実なものとするための聞き取り調査を実施することができた。特に、現行の厳格化された移民・難民政策を先導してきたマキシム・タンドネ元大統領府移民政策特別担当顧問やパリ政治学院のカトリーヌ・ヴィートル・ドゥ・ヴェンデン教授、フランス内務省の移民政策・難民政策担当者であるシルヴィー・モロー担当局課長、モナコの外国人政策局長であるセルジュ・ドニ氏とのインタビューでは大変有益な情報を得ることができ、今後の政治学的観点を枠組みとした本研究において、大きな成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者の研究目的は、フランスをはじめ欧州諸国における移民政策・難民政策や、欧州共通の移民・難民政策に影響を与えているのはどのようなアクターや要因があるのかを実証的に解明していくことである。この課題について、報告者はフランスとモナコについて、平成25年度は研究と学会発表を行うことができ、さらに現地調査にて多くの知見を得ることができた。 また、フランスだけでなく、研究対象地域にモナコも含めた研究を行うことができた。モナコは国土の三方がフランスによって囲まれていることから、フランスの政治的影響力が色濃く出ている国家ではあるものの、外国人政策はフランスをはじめ他のEU諸国と比較すると非常にユニークなものであり、EUの移民・難民政策とは全く方向性の違う政策を打ち出している。このことについて研究発表を行いたいと思い、平成26年度日本政治学会での報告を希望したところ発表内容が採用された(平成26年10月に早稲田大学にて開催)。現在、その研究発表のために平成25年度に行った研究内容を存分に生かしながら、報告資料を作成中である。 ただし、より一層研究の問いを深化し、学術論文や執筆中の著書を書き上げるためにも、現状の進め方で満足・慢心せずに自己に対して厳しく評価したいため、今回は「おおむね順調に進展している」として、今後の研究の仕方をより効率的に行えるよう見直しながら、鋭意研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までは、特にフランスの移民政策と難民政策に焦点をあてて研究を行った。しかし平成26年度は、フランスからより大きな地域であるEU(ヨーロッパ連合)を研究対象として研究を進めていき、さらなる理論の精緻化を図りたい。 そのために、欧州の中でも突出した数の移民を受け入れてきたドイツ、最大の難民受け入れ国であるスウェーデン、そして欧州の中でも最も厳格化された移民政策・難民政策をとってきたデンマークにも研究対象地域を広げて研究を行う。 さらに近年の中東地域・アフリカ地域における治安悪化や紛争激化のため、欧州に安全を求めて入域してくる移民・難民が増えている。こうした人々の国際移動についても、そのプッシュ要因及びプル要因とをふまえて分析を行い、地域研究のみにとどまらない、より広範囲な国際関係論の見地からも分析が行えるように研究を進めたい。 現在執筆中である著書作成や、平成26年10月に開催される日本政治学会においても上記研究内容を十二分に反映させ、最大の効率化と効果が表れるように努力したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一の理由として、当初、フランス政府高官やモナコの政府要人とのインタビュー、資料収集において、謝金が必要になると思い計上していた。ところが、先方との交渉過程において、先方の厚意により無償でインタビューや資料を提供してくれることとなったため。 第二の理由として、日本国内における郵送費や国内移動費が当初予定したほどの代金とならなかったため。 平成26年度には報告者の著書執筆のため、国内郵送費や国内の研究者との交流もよりさかんになることから、そうした必要経費にあてたいと考えている。
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