2014 Fiscal Year Research-status Report
ねじれ国会における立法活動の分析:強い二院制を採用する議会制民主主義国の比較研究
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25780102
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
矢内 勇生 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (50580693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較政治学 / 政治制度 / 議会研究 / 立法過程 / 分割議会 / 二院制 / 日本政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、憲法によって第一院に匹敵する権限を与えられた第二院を有する「強い二院制」の議会制民主国家を比較し、分割議会(いわゆる「ねじれ」国会)が政権与党の立法活動に与える影響を分析する。大統領制国家では、権力分立による抑制と均衡が重視され、立法府たる議会は執政府たる大統領を監視する役割を担っており、議会は政策の法案化に関して独立した役割を果たしている。それに対し議院内閣制は、立法府と執政府の権力の融合を基本とする制度設計により、選挙による多数派が形成する内閣が主導権を握り、議会が法案・政策の成否を実質的に掌握することは予定されていない。 今年度の研究では、議院内閣制国家における立法においても、分割議会によって議会が内閣の行動を変化させるほど重要になることがあり、議院内閣制の議会であっても一定の条件下で執政府から独立した影響をもつことが確認された。日本においては、予算の議決権について憲法上衆議院が参議院に優越しており、参議院が野党に支配される分割議会であっても、予算の成立には支障がない。しかし、法案については衆議院と参議院に同等の権力があり、法案の中には予算の執行に必要な予算関連法案が含まれる。したがって、予算関連法案を廃案にすることにより、参議院は内閣の政策実施を阻止することが可能である。 実際に収集したデータを分析した結果、野党が参院を実質的に支配しているとき、予算関連法案の成立が著しく難しくなることが明らかにされた。したがって、分割議会という現象は、議院内閣制を憲法が本来想定した状態から逸脱させ、議会(とりわけその第二院)に憲法の想定以上の力を発揮させるものであることがわかった。 今後は、成立した法案と廃案になった法案の内容を比較し、分割議会によって政府与党が妥協を強いられる政策に特定の傾向があるかどうかを明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まではデータの整備がやや遅れていたが、手作業によるデータの回収や入力を極力避け、コンピュターによってデータの収集を最大限まで自動化した結果、データ収集・整備の遅れを取り戻すことができた。収集したデータの分析作業も予定通り進み、理論的な仮説を検証する作業はほぼ完了している。最終成果として書籍を刊行するための原稿執筆作業も2015年4月に開始しており、研究は総括の段階に進んでいる。 したがって、全体として計画通り研究を進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、収集したデータの分析を進め、理論仮説を数量的な証拠によって検証する作業を終わらせる。特に、法案の内容を分析し、成立した法案と廃案にされた法案の特徴が、与党が両院を支配している場合とそうでない分割議会の場合で異なるかどうか検証する。また、分割議会において廃案にされた法案が、与党にとって政治的重要性の低い法案か、政権の命運を決するような重要な法案かを区別するため、各法案の重要度を数量化する作業を行う。 次に、いくつかの重要法案の審議過程について事例分析を行い、分割議会において、与党と野党の相互作用あるいは第一院と第二院の相互作用、さらには内閣と議会の相互作用の過程を詳細に分析し、立法の帰結を変化させる要因を特定する。 最後に、分析結果をまとめ、主要な成果を論文として学会等で報告し、学術誌に投稿する。また、研究成果全体を書籍としてまとめ、研究機関終了後できるだけ早い時期に出版できるよう執筆を勧める。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更により、雇用予定であった研究補助者の雇用ができなくなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が、研究所者の雇用費用または補助者に代わるコンピュータプログラム開発のための費用(プログラムの設計のための参考資料の購入等)として使用する。
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