2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
山本 達也 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (40509866)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルメディア / 民主主義 / アラブの春 / デモ |
Research Abstract |
初年度(研究期間は4年間)にあたる本年度は、研究の枠組みの再検討を行うと共に、限られた予算および時間で最大限の効果をあげるための事例選択についても再検討を行った。 本研究の出発点は、中東で発生した政治変動(いわゆる「アラブの春」)にあるため、政変から約3年が経った今、「ソーシャルメディアと政治変動」というテーマで、何が明らかになっており、何が明らかになっていないかの精査を行った。文献レビューを経て、今年度はヨルダンのアンマンにて現地調査もあわせて行った。 アラブの春については、(資料やデータ入手の制約もあり)これまで統計的手法を用いた研究が限られていたが、最近では、徐々に量的調査を基にした研究成果が報告されるようになっている。その多くが指摘しているのは、「ソーシャルメディアの普及がデモや民主化運動を引き起こすわけではない」という点である。確かに、ソーシャルメディアの普及率とデモの発生についての相関関係は低い。むしろ、アラブ諸国に限って見ればソーシャルメディアの普及率が高い国ほど、政治的に安定している。 問題は、この結果をもって、ただちにアラブの春をめぐってソーシャルメディア要因を排除してもよいということにはならない点にある。どこまで、またどのような形でソーシャルメディアはアラブの春に影響を与えたのかという点については、未だそのメカニズムが完全に解明されたわけではない。この点は、ソーシャルメディアと民主主義という本研究においても重要な論点となる。 また、本年度は、非民主主義国における民主化という視点のみならず、先進民主主義国における民主主義の質の変容という視点からソーシャルメディアが与えている影響についての検討も始めた。研究の結果、サイバースペース内の技術とサービスの変化は、監視、プライバシー(人権)という観点から民主主義との関連を有する点に注目すべきであるという視座を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、初年度としてやるべき内容をほぼ計画通りに終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、非民主主義国におけるソーシャルメディアの影響についてはアラブ諸国を主な事例として、特にエジプトの状況に注目しながら研究を進展させる。 また、同時に、来年度より民主主義国や移行国におけるソーシャルメディアと民主主義との関係についての研究を本格化させる。念頭においているのは、日本、米国、イタリア、スペインなどの先進民主主義国であるが、外交や安全保障といった国際政治的な要因もあわせて影響を与えていると思われる台湾の民主主義についても注目してみたい。 台湾については、当初の計画には盛り込まなかったが、本研究を行うにあたって中国におけるインターネット・コントロールの問題は重要な論点になるとの視点から研究を進めた結果、中台関係を抱える台湾の民主主義と人々のソーシャルメディアの利用状況は、極めて興味深い事例になるとの感触を得たためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
配分額との差額は、約14000円であり、誤差の範囲内の次年度繰越金であると認識している。 次年度は、研究計画との関係で台湾での調査が複数回予定されているが、現地でのインタビューのコーディネートを補助してくれるコーディネーターへの謝金、ないしはフィールド調査の旅費の一部として利用したいと考えている。
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Research Products
(2 results)