2013 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアと欧州における人身売買対策の形成―ネットワーク分析の観点からの比較分析
Project/Area Number |
25780109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 文子 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (80555243)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、人身売買対策をめぐるネットワーク形成とその過程における国際機構、国家、市民社会の関係を分析対象としている。そこでは、EUやASEANといった地域機構がグローバル規範を地域に普及・内面化するプロセスの中でどのような役割を果たすのかについても明らかにし、とくに人権問題(人間の安全保障問題)の一つである人身売買を例に議論するものである。そして最終的に人間の安全保障をめぐるグローバル規範の普及過程における、いわゆる人権ガヴァナンスの在り方を探ることを目指している。 そのなかで、本年度は当初の研究計画通り、EUおよびASEANといった地域機構に関する先行研究をフォローした。EUにおける地域ガヴァナンスの理論モデルを探求し、人身売買の事例を当てはめながら、同時にASEANにおける地域ガヴァナンスの現状を先行研究から概観し、ASEANにおける人身売買対策の限界についても考察した。それらの研究を纏めたものが共著として刊行予定である。また、人身売買問題の位置づけや形成要素を明らかにするため、広く人間の安全保障をめぐる諸問題、すなわち難民、女性、子ども、人種差別、拷問等についても探求し纏めた。この研究成果は、著書を執筆する際の重要な要素となる。 また、当初の研究計画では25年度はEUでのインタビューを予定していたが、米国スタンフォード大学で客員研究員として行く機会に恵まれたたため、市民社会(NGO)が活発であり多民族国家である米国における移民等に関する調査研究にも射程を広げ、在アメリカのNGO(アムネスティ・インターナショナル等)等にインタビューを展開しながら、トランスナショナルに人が売買(移動)される人身売買問題を多角的に捉え、研究を深めているところである。これらは26年度に予定しているEUやASEANでの地域機構およびNGO(市民社会)をめぐる調査においても大変重要な素地となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では25年度はEUでのインタビューを予定していたが、「研究実績の概要」で述べたように、米国スタンフォード大学で研究する機会に恵まれたたため、市民社会(NGO)が活発であり多民族国家である米国における移民等に関する調査研究にも射程を広げ、在アメリカのNGOにインタビューを行った。これらは今後のEUやASEANでの地域機構およびNGO(市民社会)をめぐる調査においても大変重要な素地となるものであり、同研究を深めるものである。 その他には、当初の研究計画通り、EUおよびASEANといった地域機構に関する先行研究のフォローやEUにおける地域ガヴァナンス理論モデルの探求、およびASEANにおける地域ガヴァナンスの現状を先行研究から概観した。それらの研究成果は共著 Benny Teh Cheng Guan (ed.), Globalization, Development and Security in Asia: The WSPC Reference on Trade, Investment, Environmental Policy and Economic Integration, World Scientific Publishing Company Inc. に刊行予定である。さらに人身売買のみならず、広く人間の安全保障をめぐる諸問題についても探求し纏めた。これは人身売買問題の位置づけや形成要素を明らかにするためにも大変重要であり、この研究成果は、今後の著書の執筆において重要な要素となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
米国スタンフォード大学での研究および米国でのインタビュー調査等を受けて、人身売買問題および対策について多角的に分析し、研究を深めていく。また、EUやASEAN地域における地域機構およびNGO(市民社会)をめぐる調査を通して、人身売買対策をめぐるネットワーク形成とその過程における国際機構、国家、市民社会の関係をさらに分析していく。最終的には、人権問題(人間の安全保障問題)の一つである人身売買をめぐる議論を挙げながら、人権問題、人間の安全保障問題をめぐるグローバル規範の普及過程における、いわゆる人権ガヴァナンスの在り方を探ることを目指している。 それらの研究成果は学会、研究会で発表し、学会誌においても論文発表する。さらにそれらを纏めたものを著書として刊行したい。それにより、国際政治学のコンストラクティヴィズムをめぐる議論や、地域機構をめぐるガヴァナンスの理論にも貢献したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していたEU地域・ベルギーにおけるEU機構へのインタビュー、および同地域でのNGOへのインタビューを次年度に延期することによって生じたものであり、延期したこれら旅費等に必要な経費として平成26年度請求額とあわせて使用する予定である。 EU機構があるベルギーでのインタビュー、およびEU地域であるイギリスにでのNGOへのインタビューに加え、当初の研究計画のとおりASEAN機構があるインドネシアでのインタビュー、およびASEAN地域であるタイ、インドネシアでのNGOや国連組織へのインタビュー調査に伴う旅費等で使用する予定である。
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