2013 Fiscal Year Research-status Report
「緩やかな協力体制」としての中ソ同盟―三層構造の史的分析(1950-54)
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25780110
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松村 史紀 宇都宮大学, 国際学部, 講師 (80409573)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中ソ関係 / 東アジア国際政治史 / 冷戦史 / 東アジア冷戦史 / 中ソ同盟 / ハブ・スポーク型同盟 / 朝鮮戦争 |
Research Abstract |
【目的】本年度は、中ソ同盟の三層構造分析のうちの第一層を研究することを目的とした。具体的には、東アジアにおける同盟の東西比較(米国中心の二国間同盟と中ソ同盟の比較)を通して、中ソ同盟の共同防衛体制を特徴づけるというものである。 【内容】西側同盟(米国中心の二国間同盟)が①敵に対する抑止、②同盟者の武力行使統制という「二重の封じ込め」を特徴とするのとは対照的に、中ソ同盟が①敵に対する共同防衛態勢が弱く(在華ソ連軍の早期撤退を決定)、②同盟者の武力行使を統制する意思や能力に乏しいという点を明らかにした。特に、朝鮮戦争前後の時期にこの中ソ同盟の体制がどのように決定され、実行されたのかを史的分析した。 【意義】学術的な意義は、二点に要約できる。①従来、中ソ同盟と西側同盟との比較研究は乏しかった。東アジアの国際政治全体のなかで中ソ同盟が果たした役割を考察するには、この東西比較の視点は不可欠である。②中ソ同盟の共同防衛態勢の実態(特に条約等の法的取決め)について、中ソ両者の新資料を利用して、詳細に史的分析した業績が意外なほどに稀有だという点である。 【重要性】①日本における本格的な中ソ関係研究が未整備ななか、その基礎を構築するための一作業となった。②1950年以降の旧ソ連公文書は一般にアクセスが難しいが、体系だった資料群を華東師範大学から提供してもらうことができた。③東アジアの同盟を東西比較することで、現代における米国型の二国間同盟と中国の独立自主外交とが向き合う国際政治の起点を素描することができた。 【研究活動の内容】①海外(釜山市、上海市)の学会等で二回研究報告した。②北東アジア学会で研究報告をした。③上海市にある華東師範大学で中ソ関係資料を調査した。④学術論文を執筆・投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由により、研究計画が当初の予定に沿って進展していると判断する。第一に、当初の目標通り、同盟の東西比較という点から中ソ同盟の共同防衛態勢について考察した論稿を国内外の学会等で発表できた。第二に、1950年以降の中ソ関係史を分析するさいに利用する基礎資料群を上海市の華東師範大学にて得られた。第三に、以上の研究成果を学術論文として投稿し、受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、2013年度得られた中ソ関係史の基礎資料群を中心にしながら、特に以下の各点に留意して研究を推進する予定である。①中ソ同盟の三層構造分析のうちの第二層として、中ソ間の緩やかな分業体制について、本格的な研究を進展させる。②その基礎的作業として、日本をめぐる中ソ間の分業については、すでにいくらか研究を進展させてきたが、朝鮮半島・東南アジア・南アジアをめぐる分業体制について、より集中的に研究を進める。③昨年、スターリン文書等が広くネット公開されたことから、それらの調査・解読作業にも取り掛かりたい。④華東師範大学で現在整理されている中ソ分業関連資料についての情報収集にも努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一の理由は、注文した書籍の納期が遅れていること。第二の理由は、次年度に毛沢東関連の新刊資料集を購入する予定であること。 次年度は、中ソ間の革命分業に関する研究を実施する予定である。おもな使用計画は次のとおりである。(1)各書籍・資料の購入(中ソ関係史関連、冷戦史関連、中国現代史関連、ソ連史関連)、(2)国内外の資料調査費(資料の複写代等を含む)、(3)研究成果発表のための学会出張費用等。
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