2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保城 広至 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00401266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アジア地域主義 / 日本外交 / 国際政治経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界的にみてユニークな経緯を辿り、必ずしも先行する研究が説明できていない東アジア地域(ASEAN+6カ国)の経済協力の諸条件を、歴史分析と計量分析を組み合わせることによって抽出し、近い将来の展望を描くことにある。すなわち、まず1970年代・80年代に当該地域の統合が進まなかった理由を明らかにした上で、それら要因を抽象化・数量化する。その上で、マルチレベル分析や生存分析という統計手法にかけることによって、1990年以降の東アジア地域経済協力の検証を行う。このように単一の研究で複数の手法を駆使することで、東アジア地域経済統合の全体像を明らかにすることが可能になる。
2年目となる平成27年度は、数量データの収集と、それを使用した計量分析に注力した。その成果の一つとして、日本の政府開発援助(ODA)と輸出・輸入・直接投資の関係をパネル・データで計量分析した研究が挙げられる。当初は日本とアジア諸国のみに焦点を絞るつもりであったが、それではサンプルに偏りが生じるため、データの範囲を全世界に広げた分析を行った。その結果としては、ODAは輸出・直接投資に、正の統計的に有意な影響を与えていることが確認された。ODAがどのようなメカニズムを通じて地域主義へと結びついていくか否かは、今後検証するべき興味深いテーマである。その計量分析の研究成果は、2014年11月に開催された日本国際政治学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画としては、26年度は歴史事例分析を、27年度に計量分析を行う予定であったが、申請者が国内を離れていたこともあり、この順序を変更した。つまり現在までに計量分析のいくつかを終え、現在いくつかの論文を投稿中/執筆中である。歴史事例分析、特に1970年代、80年代の事例に関しては、27年度に行う。結果として、おおむね計画どおりに順調に推移していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる27年度は、歴史事例分析に力点を置く。すなわち、1977年の福田ドクトリン、1980年の環太平洋連帯構想、そしてAPECの設立過程に関する東アジア諸国の見解を詳細に分析し、これら諸国の地域統合への態度――消極的だった原因――を浮き彫りにする。その上で、前年度の計量分析の結果と合わせて最終年度のまとめに繋げたい。
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Causes of Carryover |
計画では当該年度に国外で歴史資料収集を行う予定であったが、これを変更し、計量データ収集と分析を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に国外(特に豪州)の公文書館で歴史資料の収集を行う。
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