2015 Fiscal Year Research-status Report
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25780111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保城 広至 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00401266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アジア地域主義 / 日本外交 / 国際政治経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界的にみてユニークな経緯を辿り、必ずしも先行する研究が十分に説明できていない東アジア地域主義(ASEAN10カ国+日本+韓国+中国+豪州+NZ+インドの計16カ国)の経済協力(特に貿易枠組み)の諸条件を、歴史分析と計量分析を組み合わせることによって抽出し、近い将来の展望を描くことにある。具体的にはまず1970・80年代に当該地域の統合が進まなかった理由を明らかにしたうえで、それら要因を抽象化・数量化する。そのうえで、マルチレベルや生存分析という統計手法にかけることによって、1990年代後半以降の東アジア地域経済協力の検証を行う。このように単一の研究で複数の手法を組み合わせることで、東アジア地域経済統合の全体像を明らかにすることが可能となる。
3年目となる平成27年度は、主に以下の2点を中心に研究を行った。(1)2000年以降に日本との間に締結された特恵貿易協定の貿易効果を、差分の差分(difference in difference)で推定した。その結果、ベトナムおよびブルネイでは正の貿易効果があったことがわかったが、その他の国では協定の効果はほとんど見受けられなかった。データは全商品の合算を使用していたため、今後は商品別のデータでどのような結果になるか検証する。(2)1970年代から80年代にかけて、日本を中心とする特恵貿易協定締結の動きを事例分析した。その結果、ASEAN諸国からの貿易協定締結要請、あるいはアメリカからの打診に対して、日本の頑なな拒否の存在が浮き彫りになった。これはさらに実証を進めることによって、原因を追求する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史実証が計画よりもやや遅くなっているが、それは新たに貿易効果の推定を行った結果であって、総合的に見ればおおむね計画通りに研究は推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目となる最終年度は、残している歴史的実証分析を仕上げたのちに、統計分析をして研究成果をまとめる。おそらく今年度中の出版は難しいと思われるが、年度末には初校を完成させて、来年度の出版助成申請に繋げたい。
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Causes of Carryover |
今年度は数量データの分析、貿易効果の推定に力を入れたために海外資料調査を行わなかった。そのために、海外旅費分の助成金が未使用となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度ではあるが、海外資料調査(オーストラリアおよび米国)を年度前半に行い、実証研究の完成に繋げたい。
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