2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黄 宰源 早稲田大学, 国際教養学術院, 助手 (40608775)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 領土問題 / 日韓関係 / ジャーナリズム論 / 外交史 |
Research Abstract |
平成25年前半は、戦後の日韓関係と独島/竹島問題の動向について解明しようとした。特に、1951年から1965年まで行われた日韓国交正常化交渉に注目し、独島/竹島問題がどのように交渉され、どのような合意がなされたのかを探った。研究方法については、日韓両国政府が公開した国交正常化交渉関連外交文書を手がかりにして、戦後の日韓関係の動向と独島/竹島問題をクロスさせながら、交渉の経緯、交渉の内容、交渉関係者らの言動について時系列的な分析を行った。研究の成果について、まず、竹島問題に対する日本政府の交渉姿勢は強硬な姿勢から妥協的な姿勢へ、また消極的な姿勢へ変化したという傾向が見られた。例えば、日本政府は交渉の最終段階になると国際司法裁判所への付託を放棄し、問題の棚上げを示唆するなど問題の解決について消極的な姿勢を示したと言わざるを得ない。他方、韓国政府の交渉姿勢は強硬な姿勢から柔軟な姿勢に移行し、再び強硬な姿勢に戻った。韓国政府は、独島問題は国交正常化と関係がないと主張してきたが、1965年6月22日の本調印の際には問題の棚上げを容認し、国交正常化後に継続交渉するとの立場を示したことは明らかである。 平成25年後半からは、独島/竹島問題に関する新聞記事を収集し始めた。研究の成果を事前に予想するならば、日本の新聞は交渉過程と国内議論に注目し、特に批准国会の審議に高い関心を示した。その論調については竹島問題の解決を期待する立場から日本政府に対して厳しい批判を打ち出していた。他方、韓国の新聞は交渉過程や国内議論よりは両国の対立に注目していた。特に、韓国の新聞の対日論調は強硬かつ攻撃的であったと言える。韓国の新聞が独島問題についてほとんど見ていなかった部分は問題の解決方法であり、独島が韓国の領土として描かれている古地図や古文献が発見されたことを頻繁に報道し、独島領有権主張の正当性を強調した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究を達成するためのには、韓国側の国交正常化交渉関連文書と交渉に最も深く関わっていた交渉関係者らの回顧録、韓国の新聞記事などが重要な資料となっていた。そこで、韓国への研究出張を行い、例えば、外交安保研究院、国会図書館、中央図書館、東北アジア歴史財団、各新聞社、慶尚北道庁では関連資料の閲覧、複写に携わるなど資料調査に務めた。これによって、交渉の経緯、交渉の内容、交渉関係者らの言動が明らかになった。韓国への出張から得た資料は本研究を順調に進める上で非常に重要な役割を果たしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度前半には平成25年の資料収集を踏まえて、日韓国交正常化の持つ意義についてさらに詳しく考察する予定であり、特に、両国の新聞記事の言説分析に重点を置き、研究を進めようとしている。新聞記事の言説分析の結果を裏付けるためには新聞記者らはいかなる背景や意図に基づいて記事を書いたのか、読者に対してどのような認識形成を狙ったのか、どのような世論を作り上げようとしたのかなどを知ることも重要である。新聞報道についてより広範かつ深みのある分析を行うため、当時の記者らに対する聞き取り調査を予定している。新聞記事の分析が終わった平成26年度後半には日本と韓国で学会や学術誌を通じて研究成果を発表し、研究の成果を社会に還元する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、日韓国交正常化交渉において独島/竹島問題がどのように交渉され、新聞にはどのように報道されたのかについて日韓比較分析を行う予定であった。そこで、韓国側の外交文書、回顧録、新聞記事などが重要な一次資料となった。韓国への出張から得られた資料を基に研究を進展していく中で、さらに専門的な資料が必要となり、資料収集の工夫などにより他の経費より海外出張経費が当初見込みより増加したことになった。 今年度は韓国での資料収集を行うとともに、これまでに収集した資料を基に研究成果をまとめ、それを日本をはじめ、海外の学会やシンポジウムで発表することを予定している。未使用額は資料分析や研究成果発表などの経費に充てることとしたい。当該未使用額を平成26年度に使用することによって、より研究が進展することが見込まれる。
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