2014 Fiscal Year Research-status Report
金融安定化政策の制度的・政治的課題:英国・EMUの事例研究
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25780123
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
神江 沙蘭 関西大学, 経済学部, 准教授 (90611921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際政治経済学 / EU研究 / ユーロ / 金融ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、欧州において財政政策、金融政策、金融監督政策が十分連関していないことで金融安定化の目標の達成が困難になっている実態に焦点を当てたものである。中でも、諸政策に関する権限が国家レベルと地域レベルに分散しているため、調整がより困難であるEMUがケース・スタディーの中心である。平成26年度も平成25年度に引き続き、EMUの統合の歴史を振り返り、近年のユーロ圏危機の検証を踏まえてその実態と課題を分析した。その成果の一つとして、ユーロ圏での政策上の分断が生じた背景とそれが金融安定化に及ぼした影響についての論文を本年度6月にEU学会年報から出版した(「EMUの形成と金融安定化政策ー分断された政策過程と今後の行方」『日本EU学会年報第34号』229~49頁)。さらに前年度から引き続きEMUと金融安定化の課題に関する単行本(邦語・単著)の執筆に従事している。これと関連して、本年度9月のイタリアの研究機関の訪問(Johns Hopkins University, SAIS, Bologna Center & European University Institute)での資料収集や研究者との意見交換等を経て諸問題に対する理解を深め、理論構成を整理し直し、翌年1月に同プロジェクトの英語での単行本出版のためのプロポーザルを英国の出版社に提出した。上記プロポーザルは現在外部審査を受けている。さらにEU Studies Institute in Tokyo(EUSI)によって3月9日に開催された国際カンファレンス「ユーロの試練に抗して―欧州の治癒力と新たなEU学の展望」に討論者として参加し、ギリシア危機への対応やEMUの今後の制度構築について議論した(http://eusi.jp/outreach/conference-symposium/2015-3-9/)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EMUの形成とユーロ圏の金融ガバナンスに関しては、邦語だけでなく英語での単行本出版の可能性に向けて前進することができた。当初の課題である「政策連携の欠如によって金融安定化の課題の達成が困難となる実態/背景の分析」として、EU統合史や機構論との関係も踏まえつつ、EU研究に根差した検証が進められている点で当初の研究目的に沿った分析を進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もユーロ圏のソブリン債務危機の発生で明らかになった欧州経済の内的不均衡や金融安定化政策の問題、その制度的・政治的背景に関してEU統合史や機構論との関連づけを明確にしながら分析を進める。最終年度では英国の金融安定化枠組みとの比較も踏まえつつ、ユーロ圏の金融ガバナンスの特徴と課題を明らかにし、今後の方向性について検討する。
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Research Products
(2 results)