2014 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動と経済的意思決定:アイトラッキングを使った実験研究
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25780129
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹内 幹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50509148)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アイトラッキング / 実験経済学 / 意思決定 / 眼球運動 / 行動経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイトラッキングでえられた眼球運動のデータの分析を引き続き行った。実験に用いた選択課題は、実験被験者の選好とは関係なく客観的な「正解」があるもので、観察不可能な選好に依拠することなく、選択の過程を客観的に分析できる特長があった。具体的には、濃淡の異なる色を4種類(左右に2つずつ)をモニターに提示し、左の2つの色と右の2つの色を見比べて、より明るいほうの組を選ぶという課題である。客観的な正解(より明るい色)を当てることができれば、謝金がもらえるため、被験者は4つの色を見比べて迷いながら選択に至る。この見比べて迷う過程をアイトラッキングで分析したのである。 このデータをもとに、drift-diffusionモデルという選択過程モデルのパラメータを推定し、さらに、ジャックナイフ的にモデルの予測能力を確かめた。当初の仮説であった「不正解の選択肢を凝視すればするほど、その選択肢を選ばなくなる」と整合的な結果が得られたのが新規性ある研究成果といえる。ただし、予測能力が60%程度と必ずしも高くない点が課題として残っていた。 そこで引き続き行ったデータ分析では、アイトラッキングデータが外生的に与えられたものであるというモデルの前提を変えて、眼球運動も顕示された(revealed)選択過程基準であるとした。すなわち、見比べて迷うといっても、そこには「迷い方」あるいは「吟味の仕方」の一定の原型(モデル)があり、その原型に対して、外生変数である4つの色が入力されると、行為の結果として、迷いながら見比べるという意思決定過程が出力されると考えた。このモデルのシミュレーションを行いつつ、現在は、検証実験デザインを考案している。 これらの結果を、平成26年6月にハワイ大学で開かれた Economics Science Associationの世界大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、当初の仮説はすでに示しているので、その先のモデルを研究しつつある。眼球運動を外生的なデータとして、意思決定過程に入力するのではなく、意思決定と並行した選択過程の出力結果として扱うモデルをシミュレーションした点が、当初計画よりも広がりを持って進行している。同時に、当初計画にはなかった実験デザインと追加実験が必要になった点もあるが、おおむね順調な進展だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
意思決定過程(特に迷うという過程)のモデル化は、経済学分野ではまだ研究が進んでいないため、ある程度のデータ説明力をもった形で新しいモデルを提案できることの意義は大きい。そのため、今後はデータ説明力やモデルの予測力だけにとらわれずに、汎用性のポテンシャルのあるモデルを考案する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では、眼球運動を外生変数として扱い、その意思決定モデルの予測力を高めるための実験をする予定であったが、学会発表における討論から新たな着想を得て、眼球運動を内生変数として扱うことにし、追加的な実験デザインを考案する必要が生じた。そこで、実験データ採取を次年度にもできるように使用計画も若干変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験として、1人あたり2500円程度を見込み、30名分のデータ採取を計画している。
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Research Products
(3 results)