2013 Fiscal Year Research-status Report
協調行動の生成および伝播における学習と認知の役割:実験経済学的研究
Project/Area Number |
25780140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐々木 俊一郎 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50423158)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実験 / 協調行動 / 社会的選好 / 観察的学習 |
Research Abstract |
本年度は、自分の効用水準と社会全体の厚生との間にトレードオフが存在する社会的ジレンマについて既存の実験研究のレビューをするとともに、本研究課題において中心となる実験1、実験2、実験3の実験計画の策定・事前準備および実施を行った(実験の一部はErat and Gneezy (2011)に準拠して設計された)。 実験1は、配分者が自分の初期賦存額を受益者との間で配分する際に、受益者にメッセージを送ることができる実験である。この実験では、配分者が本当のメッセージを送るか嘘のメッセージを送るかについてのデータを収集することにより、配分者の向社会性または利己性の程度を計測する。実験2は、実験1と全く同じ実験の構成を持つが、配分者がメッセージを送らずに初期賦存額を配分する実験である。この実験では、同一の配分者の行動を実験1と実験2で比較することにより、配分者の嘘に対する選好を計測する。実験3は、実験1と同じ構造を持つが、過去の同じ実験における他の被験者の選択を観察できる状況を再現する実験である。他の被験者の選択を観察することによって配分者の行動が変化するかどうかを分析し、観察的学習が社会規範の生成に与える影響について検討する。 上記のうち、本年度は実験1の実験計画の策定・事前準備および実施、実験2と実験3の実験計画の策定・事前準備を行った。また、その他の研究実績として、社会的選好の伝播における学習の役割についての実験に関する論文Observational Learning and Conformity: Experimental Evidenceを執筆するとともに、関連する研究を公共選択学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、一連の実験の基礎となる実験1の実験計画の策定・事前準備および実施を行ったことに加え、実験1の応用実験となる実験2と実験3の実験計画の策定・実験プログラムの作成を含む事前準備を行った。実験1の実施回数が当初計画よりも少なかったために実験1の実施が次年度以降に必要となるものの、実験計画の策定・事前準備は、次年度以降に予定していた実験2と実験3についても先行して行っている。したがって、実験1の実施回数不足は実験2と実験3の計画の進行具合と相殺されるものと考えられるため、概ね当初の計画通りに進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、実験1を追加実施するとともに実験2および実験3を実施することによって、被験者のデータを収集することが中心となる。ある程度データが蓄積された時点で、実験データを分析し、論文を執筆する。そのうえで、実験結果を学会等で報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は実験1から実験3までを総合的に実施する必要があるため、それぞれの実験の実験計画の策定・事前準備に当初の計画よりも長い期間を費やすことになった。また、本研究課題で実施する経済実験は、研究代表者が所属する研究機関で初めて実施する実験であり、実験プログラム作成等の事前準備に想定以上に時間がかかった。それにより、実験1の実施回数が当初計画していた回数よりも少なくなり、被験者報酬が計画よりも減額したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は実験1の追加実験の被験者報酬に使用する予定である。
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