2015 Fiscal Year Annual Research Report
協調行動の生成および伝播における学習と認知の役割:実験経済学的研究
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25780140
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐々木 俊一郎 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50423158)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実験 / 社会的選好 / 嘘 / 観察的学習 / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
非対称情報下において被験者が自分と他人との間で利得を配分する際に、自分が知り得た情報を他人に正直に伝えるか嘘をつくかについて経済実験を実施して分析を行った。前年度までの実験結果によると、被験者は(1)被験者は利他的な嘘やいじわる嘘よりも利己的な嘘をつく傾向が高いこと、(2)本研究の被験者の嘘の割合は、既存研究で報告された被験者の嘘の割合よりも高いこと、などが確認された。こうした結果を踏まえ、本年度は被験者が過去の同様の実験における被験者の行動を観察した際に、その観察内容が当該被験者の行動に影響を与えるかについて追加的に分析を行った。実験結果によると、(1)他の被験者の多くが利己的な嘘をついていることを観察した際には利己的な嘘の割合は増加するものの、他の被験者の多くが正直であることを観察した際には利己的な嘘の割合は変化しないこと、(2)他の被験者の行動が観察可能な場合には、いじわる嘘は常に減少すること、などが確認された。(1)については、他人の行動の観察的学習は、被験者の利己的な嘘行動を促進させるものの、彼らの利己的な嘘行動を抑制させないことを意味しており、利己的な社会規範への同調は容易であるが向社会的な社会規範への同調は困難であることを示唆している。また、(2)については、本実験において、他人の行動を観察することが社会規範の存在を認識させるというfocusing effect(Cialdini et al. (1989))が機能していることを示唆している。
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