2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780142
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
佐藤 伸 福岡大学, 経済学部, 准教授 (60458924)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的選択 / 耐戦略性 / 社会的厚生関数 / 社会的選択関数 / 無関連対象からの独立性 / 限定反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. "Bounded response and the equivalence of nonmanipulability and independence of irrelevant alternatives" (2015). 複数の個人の選好に基づいて社会的な選好を構成する規則である社会的厚生関数に関する研究である.特に,虚偽の選好を表明することによって得をしないという性質について分析した.昨年度の「実施状況報告書」においてはディスカッションペーパーであったが,査読者や編集者からの批判・提案に基づいて改訂し,国際的学術誌であるSocial Choice and Welfareに掲載された.
2. "A decomposition of strategy-proofness" (2015) 横浜国立大学の無藤望氏との共同研究. 社会的選択理論やメカニズムデザインといった分野において最も重要な概念のうちの1つである耐戦略性(strategy-proofness)を3つの公理に分解できることを示した.耐戦略性は,虚偽申告によって得をしないことを求める公理であるがその要求が厳しい.よって,耐戦略性を含むいくつかのもっともらしい公理を満たす社会的選択の方法が存在しないという不可能性定理を得ることが多い.本稿では,耐戦略性を3つの公理に分解したうえで,それらのうち2つの公理を満たすルールの設計可能性を考えた.特に,現実によく使われるルールである最多得票制を支持する興味深い結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総合的には順調であるが,研究トピックごとに差があるので,それぞれについて記す.
1. 虚偽申告防止性能に関する研究は,国際的学術誌への掲載,新しい結果の導出と論文執筆,コンファレンス,セミナー,ワークショップにおける発表と非常に順調に進んでいる. 2. 社会的選択の情報的基礎についての研究は,"Informational requirements of social choice rules to avoid the Condorcet loser"というタイトルの論文にまとめ,国際的学術誌において査読が進んでいる.査読者や編集者からの批判・提案に基づいて改訂し,再投稿を済ませている. 3. インセンティブと情報的基礎の両面に関わる研究としては,昨年度の「研究状況報告書」の「研究実績の概要」に記したことから目立った進歩が見られなかった.未公開の論文 "On manipulation from an unacceptable social choice to an acceptable one"において一応の成果は得ているものの,個人の数が偶数の場合であるという制約的な仮定が必要な状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画期間の最終年度となるので,各研究トピックにおいて具体的な成果が挙げられるように努力するが,特に「インセンティブと情報的基礎の両方に関わる研究」に注力したい.他の研究トピックについては比較的多くの時間を割いた結果,研究が順調に進んでいるがこの研究トピックについては1年以上目立った進展がない.2人の海外の研究者との共同研究であり,連絡を密にとるのが難しいという事情もあると考えている.私がより多くの時間をこの研究トピックに割くのはもちろん,可能であれば共著者が集まる機会を作り,集中的に議論して研究を進めたい.
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Causes of Carryover |
前年度に生じた繰越額がほぼそのまま次年度使用額となった.したがって今年度についてはほぼ当初の予定通りの使用額だったが,前年度の繰越額を使って購入予定であった「画面に直接ペン入力可能なノートパソコン」の購入を見送ったため,その分が次年度使用額として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書・雑誌・旅費等の当初予定していたものに加え,上で書いた「画面に直接入力可能なノートパソコン」があれば論文の校正等で非常に便利なので購入する.
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