2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 准教授 (70454634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自由主義 / 功利主義 / マーシャル / ミル |
Research Abstract |
2013年度の主要実績は次の3点である。第1に、J.S.ミル(1806-73)の経済思想・自由主義に関連する研究として、単著論文「マーシャル『経済学原理』における人間観――J.S.ミルとの関係から――」(柳田・諸泉・近藤編『マルサス、ミル、マーシャル――人間と富との経済思想――』所収、2013年11月、昭和堂)を刊行した。本論文は、近代経済学の枠組みを確立したA.マーシャル(1842-1924)の『経済学原理』(1890年初版)にミルの与えた影響について、近年の重要な2つのマーシャル研究(Raffaelli, 2006, "Marshall's Evolutionary Economics", Routledge; Cook, 2009, "The Intellectual Foundations of Alfred Marshall's Economic Science: A Rounded Globe of Knowledge", Cambridge University Press)を踏まえながら考察したものである。 第2に、名古屋大学大学院経済学研究科ワークショップ社会経済研究にて、「ミルの経済思想の系譜:マーシャルとシジウィックを通じて」(2013年12月)というタイトルにて研究発表を実施した。同発表は上記の論文とも関連し、ミルをターゲットとして、その自由主義的・功利主義的経済思想が19世紀後半の経済思想に与えたインパクトを検証した。 第三に、研究集会「功利主義と公共性」にて「経済学におけるパターナル・アイデア」(2014年3月)というタイトルで研究発表を実施した。同発表は「功利主義と公共性:「経済」は人々に「幸福」をもたらすか?」(課題番号:23330067)とも関連し、「パターナリズム」は「リベラリズム」を検証するうえで重要な判断材料となりうる点などを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の第1および第2の実績において、マーシャルを通じてミルの功利主義的・自由主義的経済思想の特徴を検討できたことは、本研究課題の進行にとって極めて有益であった。この点は、とりわけ20世紀以降の経済学の発展とその性質を見極めるうえで、有効な視点になりうると考えられる。 また第3の実績に関して、19世紀の経済思想における自由主義的特徴を見極めるうえで、「パターナリズム」が有効な判断材料になりうるという着眼点ついても、本研究の遂行上きわめて大きな進展であった。以下でも述べるように、これは本研究全体の方向性を定めていくうえで、極めて重要な視点であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、今後は「パターナリズム」を一つのリベラリズムに対するアンチテーゼないしは判断材料としながら、19世紀の経済思想における自由主義的側面を検証していくことにしたい。最近の経済学研究では、行動経済学の成果を踏まえつつ、これまで経済学において看過ないし敵視さえされていたパターナリズムが、再検証されつつある。こうした最近の研究動向を踏まえつつ、19世紀のリベラルな思想家と見なされた人物たちがこの「パターナリズム」に対して、どのように向き合ったのかを検証していくことにしたい。
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Research Products
(3 results)