2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780147
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 准教授 (70454634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パターナリズム / リベラリズム / 経済思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度における主な研究成果は次の二点である。 平成26年8月に横浜で開催された国際学会International Society for Utilitarian Studies(国際功利主義学会)にて、Paternalistic Ideas in Nineteenth Century Economic Thoughtと題する研究報告(単独)を行った。同名の論文は現在改定のうえで、27年度中に国際ジャーナルに投稿予定である。同報告および論文は、自由主義(リベラリズム)と干渉主義(パターナリズム)の関係を19世紀経済思想史の観点から読み解くものであり、本研究における骨格となる議論として位置づけられる。パターナリズムとリベラリズムは一般に対立する概念・概念と見なされているが、近年では行動経済学などの分野においてリバタリアン・パターナリズムとして、両者を引き合わせる視点が注目を集めている。同報告・論文はこうした状況を念頭に、19世紀の自由主義経済学とパターナリズムの関係を、当時の干渉的介入(パターナリスティック・インタフェレンス)の語彙的コンテクストを踏まえながら扱ったものである。 第二に、論文「イギリス主流経済学における理想主義的側面」を執筆し、本論文は学術雑誌『イギリス理想主義研究』に掲載予定である。同論文は、19世紀経済学の歴史の趨勢を踏まえながら、とりわけ主流派経済学において理想主義的な思想・価値観がどのように展開されたのかを扱ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた自由主義の展開を検証するうえで、パターナリズムとの関連が重要であるという新たな視点が加わることになった。そこで、「パターナル」という語彙が19世紀において実際どのように活用されていたかに関して、当時の各種文献・新聞に関するデータベースを通じて調査を進めている。この作業に多くの時間を要していることもあるが、全体としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、19世紀の自由主義やパターナリズムの意義を正確に捉えるうえでは、そうした構想が当時の経済学者の思想に鋳込まれていることを、解釈・検証することが不可欠である。しかし他方で、実際にその語彙自体が当時どのように活用されていたのかに関する、概念史的視点が不可欠であると考えられる。したがって今後は随時研究成果を発表しつつ、正確なコンテクストと歴史的証左を示すために、各種文献やデータベースを活用しながら、「実際の用法」に関する調査をさらに進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
イギリスでの資料・データベース調査(パターナリズムという語彙の活用・コンテクスト)と研究会出席(ベンサムのパターナリズムに関する研究報告)のために予算を組んでいたが、日程の都合上短縮せざるを得なくなったこともあり、未使用額が発生することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のパターナリズムの語彙的根拠に関する資料・データベース調査を27年度に再度実施予定であり、同調査に充当することを予定している。
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Research Products
(3 results)