2015 Fiscal Year Research-status Report
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25780147
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 准教授 (70454634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経済思想 / 理想主義 / 自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度に刊行された研究の成果としては、学術雑誌『イギリス理想主義研究年報』第10号に掲載された、単著論文「イギリス主流経済学における理想主義的側面:ポリティカル・エコノミーからエコノミクスへ」pp.19-27.がある。 同論文では、アダム・スミス以来の本格的な経済学の形成を踏まえつつ、本研究のテーマである19世紀から20世紀にかけてのイギリス主流経済学の変容について、その理想主義的側面や自由主義との関係に注目しながら明らかにしたものである。 第一に、『道徳感情論』を踏まえれば、スミスの経済思想は単に利己心に集約されるものではなく、むしろ理想の人間観や幸福観が鋳込まれていることを論じた。第二に、リカードやマルサスを経て、古典派経済学を完成させたとされるJ.S.ミルの経済思想について、『自由論』や『功利主義論』で展開される理想主義的・自由主義的な観点こそが、その中心的な原理を形成していることを論じた。第三に、19世紀後半の限界革命を経て、理論化を進めた経済学の歴史において、なおケインズは美的・芸術的世界に関する価値観を一つの軸として、自由と経済の問題に向き合ったことを論じた。 また同年度において、経済的自由主義に関連する重要英語文献である、サミュエル・フライシャッカー著『分配的正義の歴史』の翻訳作業を進め、これが概ね完成した。同成果は、28年度夏に、晃洋書房より出版予定である。その他、必要文献の収集や分析等を行い、英文論文の執筆や国際学会の準備なども適宜進行させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては、おおむね順調に進展していると言えるが、研究を進めていくなかで、当初予定していた計画からの変化は若干生じつつある。特に、前述の『分配的正義の歴史』の翻訳作業は、当初予定していたよりも、大幅な作業時間を要するものであったことが、経済的自由主義の問題を見極めるうえで、非常に有益な示唆に富んだものであり、同訳書の出版は、広く学術的意義を有すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は最終年度であるため、国際学会での報告や英文論文の刊行などを最終目標として進めていきたい。現在予定しているのは、2016年7月にフランスで開催される国際功利主義学会にて、ミルの経済思想に関する学術報告を行うこと、また同論題の論文を投稿・刊行することである。また前回の国際功利主義学会にて報告した、パターナリズムに関する論文の刊行なども進めていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
一つの理由は、ヨーロッパでのテロ事件の発生などによる国際情勢の変化のため、当初予定していた現地資料調査を次年度に先送りとして見送ったことである。また次年度において、フランスでの国際学会の報告を検討していたため、次年度の予算確保の観点からも、27年度の海外渡航を見送ったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り、フランスでの国際功利主義学会へのプロポーサルが先日(2016年4月)に受諾(アクセプト)されたため、平成28年7月に学会報告のため渡仏予定である。また、9月もしくは3月ごろには、渡英して大英図書館やケンブリッジ大学などで現地資料調査を行うことや、ワークショップへの出席することなどを予定している。
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Research Products
(1 results)