2013 Fiscal Year Research-status Report
資源分布と経済成長に関する動的モデルの構築と計量分析
Project/Area Number |
25780160
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
内田 真輔 信州大学, 経済学部, 講師 (70636224)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 資源分散 / 内生的経済成長 |
Research Abstract |
豊かな天然資源は、資源国の経済に停滞と成長という相反する結果をもたらしている。このような資源と経済成長の非単調な因果関係を説明するため、従来の「量」的な資源の豊かさの定義に加え、本研究では、資源投資の収益率に影響を及ぼす資源の地理的な「分散」を新たな豊かさの指標として用いる。当該年度には、資源の量と分散に基づく投資決定問題を内生化した動的モデルの構築を行った。 まず、天然資源の分散度合が資源利用に伴う社会生産関数の選択問題に影響を及ぼすと仮定し、貧困トラップモデルに倣ったシンプルな経済成長理論モデルを構築した。その際、天然資源の分散度合いをパラメータとして明示的に生産関数に組み込み、成長過程において資源分散が投資収益率にもたらす影響の説明を試みた。 その結果を基にした比較静学分析により、天然資源の分散度合いが小さい場合、つまり資源が比較的密集している場合は、長期的な社会資本ストック(経済成長)が高位均衡へと収束し、天然資源の分散度合いが大きい場合は、長期的な社会資本ストックが低位均衡へと収束することが説明できたといえる。 このように、天然資源の分散度合いが経済成長経路に違いをもたらす主要因は、規模の経済性にあると考えられる。天然資源は、地理的に密集しているほど高収益率を背景とした多くの投資を誘引し、さらに周辺インフラストラクチャーへの設備投資による社会関係資本の増加などの波及効果も期待できるからである。つまり、地理的に天然資源が集中しているほど規模の経済性の恩恵を受けることができるのである。この結果より、資源の地理的な分散は、資源投資の収益率、さらには経済成長経路に対して重要な影響を及ぼすことを理論的に示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構築した理論モデルから一定の成果を得たものの、モデルの制約が依然多く、今後も継続的に改善を続けていく必要があるため、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降に予定しているシミュレーション分析の準備を行いつつ、理論モデルのブラッシュアップに努める。その際、協力体制にある動的マクロモデル専門家との意見交換を以前より積極的に行ったり、関連する研究会や学会に参加したりすることで、必要な知見の収集・整理を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に購入を予定していた物品の納入が遅延した。また、在籍学部が電子ジャーナルの整備計画を進めている中途であったこともあり、それと重複しないように新規の電子ジャーナル講読や論文集の購入を一時見合わせた。 これらが、次年度使用額の生じた主な理由である。 当該年度に購入を予定していた物品は、次年度の4月に納入済である。また、電子ジャーナルの講読や論文集の購入についても、学部の整備方針が決定次第、不足分を調達する予定である。 次年度分として請求した研究費は、当初の予定通り、打合せや研究会・学会などへの出張費と、英語論文校閲委託費などの論文作成関係費として使用する計画である。
|