2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石橋 郁雄 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (30365035)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 利潤増加型参入 |
Research Abstract |
本研究の全体構想は、参入によって既存企業の利潤が増える(以降、利潤増加型参入と呼ぶ)可能性を示した先駆的な実証結果と整合性のある理論モデルを提示することである。本年度は、特に卸売市場を明示的に扱った垂直的関係の市場に焦点を絞り、上述の分析を進めていった。より具体的な内容は以下の通りである。 まず、技術標準をめぐる競争などの事例で多く見られた、上・下流の垂直構造を持つ事例を表現する経済モデルを構築し、その解析的分析と数値分析を行った。解析的には均衡を導出することに一定程度成功した。今回の分析で、一定の条件下で陣営レベルでは利潤増加型参入が均衡で起こり得ることが明らかになった。更に導出された条件の具体的な特性を調べるために、数値分析を行い、特定の条件が強く作用しているケースがあることを発見した。 本年度の研究成果の意義の一つに次のようなものが挙げられる。現実の産業界でも多く見られるような、独立した企業群が陣営・グループを作り、そのようなグループ単位で競争する構造の市場では、business stealing effect が利潤増加型参入を引き起こす重要な要因の一つとなり得ることが、本年度の分析によって明らかになった。現時点では非常に限られた設定の上での話であるが、分析結果を見る限り、著しく特殊な効果ではないと推測され、ある程度一般的な性質の結果である可能性が高い。business stealing effect 自体は産業組織論の世界では非常に良く知られているものだけに、この発見は利潤増加型参入の一般性を探る上で興味深いものである。 また、これらとは別に現実の事例の調査や隣接分野の文献探索といった補助的な研究活動も行った。特にマーケティング理論や会計学的資料による裏づけなどの有効性について調査している。この点については今後も継続して判断していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
利潤増加型参入が起こる均衡を持つ経済理論モデルの構築に成功しているという点で、初年度の目標はある程度達成しており、一定の評価はできると考える。 しかしながら、より広範な設定の下で同様の均衡の存在が示せていないこと、設定がどの程度現実的なものかを検証できていないことなど、今後の課題として残るものもあるため、減点材料もないわけではない。 これらの評価ポイントを総合すれば、上記の自己点検による評価は妥当と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
既にある程度見込みのある経済理論モデルを構築できているため、今後はこのモデルをより詳しく分析することを中心に進めていく予定である。 具体的には、より広範なパラメーターの範囲で均衡にどのような構造的変化が生じるのか、利潤増加型参入の条件がどのように変化していくのかを調べ、それらの変化の背後にある経済学的直観を明らかにしていくことを目指す。 また、文献の調査も今年度同様に継続する予定である。文献調査の方向については、モデル分析の裏づけとして使える現実の事例を関連する数値と共に挙げられるかどうかという点を重視していく予定である。当面は、企業が公開している決算やアニュアルレポートといった資料が利用できるかどうかについて調査・検討を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定の数理解析ソフトウェアの購入に若干不足していたため、翌年度に繰り越して購入することにした。 不足額を翌年度分から支出するようにして、上述のソフトウェアを購入する計画である。
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