2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石橋 郁雄 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (30365035)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 参入 / 不完全競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体構想は、参入によって既存企業の利潤が増える(以降、利潤増加型参入と呼ぶ)可能性を示した現実的な理論モデルを提示することである。本年度は、特に現実の応用例となり得る市場の調査及び本格的な事例分析へ向けての準備作業と、候補市場の特徴を参考にした基本モデルの改良を検討した。より具体的な内容は以下の通りである。 まず、サーベイ的に様々な事例を調査していく中で、携帯電話市場が潜在的な応用事例として浮かび上がってきた。携帯電話市場では、スマートフォンの普及により、従来の音声だけでなくデータも扱うようになり、徐々に後者の比率が高くなってきている。こうした中、仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator, MVNO)の存在感も増してきており、相対的に大手3社がヘビーユーザーを、後発の企業がライトユーザーを主たる顧客として取り込む住み分けが進んでいる。また、MVNOの大半はNTT Docomoと回線の利用権の売買を通じて垂直的な取引関係になっている。 これらの点に注目して、MVNO企業の参入活発化と既存企業の利潤との間にある関係を明らかにする方法を模索した。経営上の重要データである各種費用・収入を収集することは事実上不可能と考えられるため、財務諸表や官民のシンクタンクなどが発行しているレポートなど、一般公開されている比較的信頼性の高いデータに注目していく方法を試すことにした。そこで、各種資料に出てくる数字を読み解くために、会計学などの基礎的な準備も同時に進めた。 また、現実の携帯電話市場は総務省の監督もあり卸売市場の動向は経済合理性だけで決まるわけではないこと、大手3社は回線網の構築から販売までを行うという意味で川上・川下が一体化した企業であること等を考慮した基本モデルの修正可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現実の事例を掘り下げて調査する目的で、現在財務諸表や政府・民間シンクタンクのレポートなどの各種資料を読みこなすための準備を行ってきた。その分、多少の遅れが生じている。 他の点に関しては概ね順調であり、一定の目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き各種資料を読みこなせる力を養いながら、参入が既存企業の利潤を高めていると合理的に考えられる事例の発掘に努めていく。また、そうした産業に見られる特徴的な要素を踏まえながら、出来るだけ簡素な基本モデルを構築し、参入が既存企業の利潤を高めるメカニズムの本質的構造を明らかにする。 主張そのものに直観に反した内容が含まれているため、現実の対応事例をいかに説得力を持つ形で挙げられるかが、研究成果の意義を左右するかもしれないと考えている。そうした意識を強く持って、2015年度は精力的に携帯電話市場を中心に応用事例となり得る現実の事例の発掘に重点を置いていく予定である。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた複数の書籍の中から、最適なものを絞り込めなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
候補の書籍を再度リストアップし、最適な書籍を選定の上、その購入に当てる予定である。
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