2015 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム・日本の企業・工場レベルデータを用いた国際化とその国内経済への影響の研究
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25780163
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (40621751)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベトナム / 企業データ / 直接投資 / 外資系企業 / 医療保険 / 貿易 / 雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究環境のために欠かせないデータ整備に概ね目途がついた。特にベトナムのデータに関しては、データのパネル化の精緻化により注力した結果、データの特質や限界も明らかとなってきた。これらの情報はきちんと論文の中で言及しつつ研究を進めて行く予定である。産業連関表や産業分類と企業データの結び付けも概ね目途が付き実際の分析に用いている。 以下に、進捗経過を述べたい。第一に、1990年代末の直接投資に関する法改正を踏まえての、パネル化された全数調査を用いた外資系企業の生存要因に関する論文であるが、国際的学術誌から改訂要求を受けて、その作業を行った。現在再投稿中で、採択の可否を待っている段階である。第二に、海外からの直接投資のベトナム国内企業へのスピルオーバーの研究を進めている。この研究のためには、企業データのみならず産業連関表及び産業分類の情報が必要になり、時間を費やす研究となっている。分析は大幅な進捗を見ており、並行して論文の執筆にも取り組んでいる。28年度中に国際的学術誌への投稿が可能と考えられる。第三に、中国からの輸入がベトナムの製造業に対して雇用・売り上げの面でどういった影響を与えているかの研究を進めた。企業データに加えて世界産業分類とベトナム産業分類の突合及び世界の貿易データが必要となるため、かなりの労力が必要であるが、28年度中にワーキングペーパーを完成させたい意向である。第四に、ベトナムの国内企業は従業員を医療保険に加入させることが義務付けられているが、これが企業の利益にどういった影響を及ぼすのかの研究にも取り組んでいる。このテーマに関しては残念ながら含まれる質問項目の制約上、2009年のデータしか用いる事が出来ないが、第一稿が概ね形になりつつある。 日本のデータ(工業統計)を用いた、輸入浸透度の雇用への影響に関する分析は投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベトナムに関するデータ整備に関しては様々な分析に耐え得るような段階にほぼ達していると考えている。これはパネルデータの精緻化に励みデータの特質や限界が明らかになったこと、産業連関表や産業分類表との結び付けがそれなりに出来たことが大きい。よって、取り組みたいと考えていた様々な分析に取り掛かる事が出来ている。特に、外資系企業の全数調査を用いた生存分析に関する論文に関しては、論文改訂・再投稿済みの段階であり、予想を上回るスピードで進んでいる。その他のトピックの研究に関しても、分析の進捗を見ており、概ね順調に推移していると考えてよいと思われる。これらのトピックに関しては論文化していくことが今後の中心課題になると考えられる。ただ、データ分析にはやはり相当の時間を要することが考えられるので、今後の進捗については不確実性が存在するのも事実である。そういった点を常に考慮に入れつつの進行となろう。 日本の工業統計を用いた、輸入浸透度による雇用への影響に関する分析も共著者と連絡を取って、改訂作業が終わったため、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナムに関しては、データ整備が様々な分析に耐え得るような段階にほぼ達していることを踏まえて、地道に分析及び論文執筆に取り組むと共に、学会での発表も行いたいと考えている。外資系企業の全数調査を用いた生存分析に関する論文に関しては、再投稿中の国際的学術誌からの採択の可否の結果待ちの状態であるが、結果に応じて必要な対応をしたいと考えている。直接投資のベトナム国内企業へのスピルオーバーの研究及び中国からの輸入のベトナム製造業の雇用・売り上への影響の研究に関しては、分析を終えて論文の形にまとめ上げる予定である。可能であればワーキングペーパーとして完成させ、国際的学術誌への投稿まで持って行きたいと考えている。国内民間企業の従業員の医療保険加入とその企業のパフォーマンスへの影響は、経済学分野と国際医療保健分野をまたぐ学際的な研究であり、その第一稿が形になりつつある。この論文に関しては、開発関連や国際医療保健関連の学会での報告も視野に入れている。どのトピックにも該当することであるが、データ分析にはやはり相当の時間を要し、不確実性も存在する。よって、時間に余裕を持たせて取り組むことを常に念頭に置きたいと考えている。 日本の工業統計を用いた、輸入浸透度による雇用への影響に関する分析の論文に関しては、国際的学術誌に投稿中である。ただ、申請者の研究関心が大幅にベトナム企業データを用いたものに移ってきていること、ベトナム企業データを用いた研究だけに限っても上述した医療保険と企業のパフォーマンスといった追加的研究テーマがいくつかあることから、日本の工業統計を用いた次のテーマの研究に関しては、慎重に見極めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究を進めて行くうえで必要に応じて研究費を執行したため当初見込み額と執行額は異なったが、研究計画に大きな変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めて行く。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、物品費、英文校閲費、旅費、アルバイトの雇用等に充てる予定である。ベトナムへの出張も検討中で、その場合旅費への支出がより大きくなる見込みである。また、最新のベトナム企業データの購入も検討しているが、現在進捗中の研究との関係から慎重に見極めたい。
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