2013 Fiscal Year Research-status Report
公的助成による技術普及と波及効果:構造推定を用いた太陽光発電と電力市場の分析
Project/Area Number |
25780164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
明城 聡 法政大学, 経済学部, 准教授 (70455426)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 太陽光発電 / 補助金 / 固定価格買取制度 / 外部性 / 電力市場 / 低炭素社会 |
Research Abstract |
1.太陽光発電の普及に関して実施された補助金制度や余剰電力買取制度がどのような影響をもたらすのか、特に住宅用の太陽光発電の普及と家庭の電力消費に与える影響を分析するための経済モデルの構築をおこなった。住宅用太陽光発電への補助金制度(1994年~)は、一般家庭が太陽光発電システムを導入する際に設置容量(kW)に応じて一定額が給付される制度である。また余剰電力買取制度(2009年11月~)は既設及び新規導入される太陽光発電システムについて、余剰電力を従来の2倍となる48円/kWhにて10年間買取ることを保証する制度である。これら制度のもとで、消費者は太陽光発電の導入にかかる初期の経済負担と将来的な電力消費や売電収入のトレード・オフを考慮して意思決定するものと考えられる。この点を踏まえて太陽光発電を入れるか、入れないかという離散的な意思決定と、電力をどれだけ消費するか(売電するか)という連続的な意思決定を同時に説明する消費者行動モデルを考案した。また、このモデルを使った実証分析を行うために必要な太陽光発電の導入量、価格、売電量などのデータ収集も併せて行った。 2.上記の理論的な内容については、2013年9月に行われた日本経済学会秋季大会の特別セッション「構造型と誘導型」にて研究報告を行った。 3.太陽光発電に関してこれまでに行った補助金政策の普及効果と社会厚生についての研究内容をまとめたものを含めて書籍を出版した(『プロダクト・イノベーションの経済分析』、大橋弘(編)、東京大学出版会、2014年2月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析フレームワークの構築についてはおおむね順調に進捗したと言える。ある家庭が太陽光発電を導入するかの意思決定は、太陽光発電の導入にかかる初期の経済負担と、将来的な電力消費および売電収入に関してトレード・オフが存在する。消費者行動をモデル化する際に問題となるのは、太陽光発電を導入する家庭と導入しない家庭では節電や売電に対する意識にかなり差があると考えられる点である。これは太陽光発電を導入する家庭は電力不足に対する危機意識が高いというだけでなく、節電によって売電収入が増加するため、より節電する経済的なインセンティブが働くためである。したがって家庭の太陽光発電導入と電力消費の関係を正しく分析するには、互いに関連した2つの意思決定を同時に説明する経済モデルが必要となる。この点については、先行研究にあげられるMarketing Science 掲載のNair, Dube, Chintagunta (2005)が特に参考になった。この研究では互いに関連をもった離散的な選択と連続的な意思決定を1つの効用関数で説明する。このモデルを修正することで、太陽光発電の導入と電力消費に関する意思決定をうまく表現することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策については、まず構築した経済モデルを使って分析を行うためのプログラムを作成する。プログラミング作成では主としてC++言語を使う予定である。また分析の進捗に合わせて論文執筆を進めるとともに学会報告を予定している。研究報告では日本経済学会、European Association for Researches in Industrial Economics, American Econometric Society 等を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に予定していた海外出張(European Association for Researches in Industrial Economics)が他の予定と重なりキャンセルとなったため残金が発生した。 海外出張(American Econometric Societyを予定)の旅費として利用する計画である。
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Research Products
(2 results)