2014 Fiscal Year Research-status Report
寡占市場における垂直的企業結合・在庫保有・複数層から構成される市場に関する研究
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25780167
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水野 倫理 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60589315)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 垂直的市場 / 価格支配力 / 二重限界性 / 拮抗力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,寡占市場における垂直的企業結合の問題について分析を行っている。このような分析を進めた結果,次のような問題に直面した。それは,川下市場の企業数が少ない場合,川下企業は自身にとっての川上市場に対して価格支配力を有すると考えられるというものである。先行研究ではこのような問題に対して有用なモデルをあまり提供できていない。先行研究に従うことにより,この問題を無視することもできるが,2014年度の研究では,この問題を解決することを優先した。その理由は,現実の競争政策を考える際に,不適切な仮定が少ない方が望ましいと判断したからである。研究を進めた結果,川上市場と川下市場がともに寡占市場であり,川下企業が川上市場において価格支配力を持つモデルを構築することができた。新たに構築したモデルを用いて明らかになったことは,以下の通りである。まず,川上企業の価格支配力の増加は川上市場と川下市場の両方の価格を上昇させるが,川下企業の価格支配力の増加は川上市場の価格を低下させ,あるパラメータの下で,川下市場の価格も低下させる可能性があること分かった。この結果は,川下企業の拮抗力(countervailing power)の議論と整合的である。また,この研究で構築されたモデルでは,必ずしも先に川上企業が行動する必要がないため,川上企業と川下企業が同時に行動する場合における二重限界性の問題を議論することができた。その結果,川上企業が先に行動するモデルと比べて,同時に行動するモデルでは二重限界性の問題がより重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともと注目していた,垂直的企業結合の問題や在庫に関する問題を扱うことはできなかった。しかし,それを解決するために考えなければならない問題である「川下企業の川上市場における価格支配力」を分析できるモデルを提供することができた。これを解決することによって,当初のテーマをより現実的に分析することができるようになったと考えている。予定していた部分の遅れと,予定していなかった部分の進展では,後者の方が大きいと判断したため,このような達成度の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は計画の最終年度であるため,得られた結果を学会や学術雑誌を通じて発表していきたいと考えている。現時点では,前年度に得られた成果は論文としてまとめられているので,これを日本経済政策学会で発表する予定である。また,そこで得られたコメントを取り入れ,ある程度評価されている英文査読付き雑誌に投稿するつもりである。また,2015年度中に,これまでの成果を取り入れたモデルを構築し,当初予定していた垂直的企業結合や在庫の問題に取り組みたいと考えている。得られた成果は,英文査読付き雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が18,794円となったが,これはそれほど大きい額ではないため,概ね計画通り使用されたことになる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究成果を発表する期間としているため,学会での発表や論文を投稿する場合の費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)