2015 Fiscal Year Research-status Report
高成長から景気減速への移行局面下インドにおける分配経路としての人口移動の経済分析
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25780177
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 眞理子 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (30613228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インド / 経済成長 / 貧困 / ジェンダー / 移住 / 労働参加率 / 女性差別 / 女性労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2000年から2010年の間、インドは順調な経済発展を遂げ、「成長した」インドは、本格的な意味における「新しい中間層」を人口比において多く有するようになったことで(注:この「新しい中間層」には、いわゆる「グローバルな中間層」(Banerjee and duflo: 2008)のみならず、ドメスティックな意味において中間層を構成する人々を含む)、貧困は減少し、さまざまな社会的機会が生まれた。 その一方で、インドでは、成長と同時に社会的な保守性や逆進性が表面化しているように思われる。一見、経済的合理性を有さないように思われるある種の伝統的な制度・慣習等は、従来的には低生産性を補完するために重要であったという指摘はよく行われており、インドの「差別的」ともいえる独特の社会構造制度もうそのような文脈で捕捉することが可能である。したがって、生産性が高まり、中間層が拡大するにつれて、そのような社会構造や旧来の制度的な圧力は弱まるはずであると想定される。しかしながら、同時に急激な経済価値の上昇局面において、旧来の「不合理な」社会規範が金銭的な価値を持って補強されることで、かえって保守的な社会構造への回帰が強まってしまう可能性がある。インドにおいては、中間層においてそうした社会傾向が観察されており、中でもジェンダー面における逆進的な不平等性には注目すべきものがある。2010年度までの経済成長局面においてすら、女性雇用は成長に見合うほどには増加しておらず、むしろ女性の労働参加率が減少しており、経済成長の鈍化による悪影響が懸念されている。 現在、インド経済成長はかつての高成長期と比較すると減速過程にあり、そのような社会構造の変化を受け、社会的に後進的な立場に置かれた階層/ジェンダーの経済的機会へのアクセスはどう変化したかという点について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究に必要な資料が入手可能な範囲内においては順調に揃いつつある。また、成果は論文として発表されており、当年度内に出版もされる予定である。 研究を進めていく中において、当初予定よりもインドの経済発展過程においてジェンダーの重要性に着目する必要性が増加したため、経済学的観点のみならず、社会学的な考察をより必要とする状況となっているため、社会構造に関する資料を追加的に必要としている。 また、インドのNational Sample Survey Organizationによる調査項目が不定期になっているため、当該期間における移住データなどが把握しにくい状態が継続しているため、補完的なアプローチにより解決を目指していく。 なお、過年度においては休職を余儀なくされるような体調面における深刻な問題があったため、論文の発表が大幅に遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、当初の研究予定よりもジェンダー研究の重要性が高まってきたため、ジェンダーに関する資料収集(国内および在外において)および研究をより重点的に行う。 収集した文献および統計資料をもとに、主にクロス・セクション比較を用いた計量的な分析を行い、研究の発展を目指す。
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Causes of Carryover |
健康上の理由から休職するなど、研究がやや遅れている影響があり、予算の執行にも遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析のためのパソコンや海外における論文発表などの用途に充当する予定である。
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