2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
玉田 桂子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80389337)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生活保護基準 / 社会保障 |
Research Abstract |
平成25年度は、生活保護基準の決まり方の制度を歴史的な経緯を振り返りながら整理し、国際比較に関する先行研究をまとめた。Immervoll (2009)によると、OECD諸国の公的扶助額を比較すると、日本の生活扶助基準は国際的にみて必ずしも低いとは言えないことが分かった。さらに、『全国消費実態調査』の集計データによる都道府県別の生活保護基準の決定要因について分析を行った。都道府県別生活保護基準は、生活扶助(単身、第1類費+第2類費)+期末一時扶助費+住宅扶助実績値の人口加重平均とした。この都道府県別生活保護基準が消費者物価地域差指数、消費支出、年収第1・五分位の影響を受けているか否かについて分析を行った。分析の結果、生活扶助+期末一時扶助費を被説明変数とした場合、物価が上昇すると生活扶助基準が上昇することが示された。さらに、生活扶助基準+期末一時扶助費+住宅扶助実績値を加えたものを被説明変数とした分析を行ったところ、消費者物価指数が上昇すると生活扶助基準+期末一時扶助費+住宅扶助実績値が高くなり、年収第1・五分位の額が高くなると生活扶助基準+期末一時扶助費+住宅扶助実績値が低くなる事が示された。以上は、社会保障審議会生活保護基準部会(2013)で示された実際の消費支出と生活扶助基準との乖離が見られるという結果と整合的である。 参考文献 Immervoll, Herwig (2009) “Minimum-Income Benefits in OECD Countries: Policy Design, Effectiveness and Challenges,” IZA Discussion Paper, No.4627. 社会保障審議会生活保護基準部会[2013]「生活保護基準部会報告書」厚生労働省
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度ではデータの入手、研究への着手を順当に行う事が出来たため、当初の予定通り生活保護基準の制度の概観や国際比較、都道府県別の集計データの分析を行うことが出来た。国際比較では、OECD諸国の中でも日本の生活保護基準は必ずしも高いとは言えないことが分かった(Immervoll (2009))。分析の結果より、消費者物価地域差指数が高くなると都道府県別の生活扶助(単身、第1類費(12-19歳)+第2類費(単身、冬期加算含む))+期末一時扶助費が高くなることが示された。一方で、消費支出、年収第1・五分位の影響はほとんど受けないことが明らかになった。一方で、消費者物価地域差指数は生活扶助基準+期末一時扶助費+住宅扶助実績値に正の影響を与え、年収第1・五分位は負の影響を与えることが示された。ただし、消費支出は生活扶助基準+期末一時扶助費+住宅扶助実績値に影響を与えない。ここで得られた結果は社会保障審議会生活保護基準部会(2013)で示された結果とおおむね整合的であると言える。 2013年に生活保護基準が平成25年8月以降段階的に3年間かけて引き下げることが決定されたため、改訂後の生活保護基準の検討を行う必要が出てきた。その検討を行うために必要な平成25年分の『家計調査』が3月に公開されたため、平成26年度から分析を開始したところであるが、データの制約上簡単な分析にとどまるため、分析の大半は終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は『全国消費実態調査』の匿名データを用いて平成25年以前の生活保護基準のどのように決まっているのかを等価尺度などを用いてより精緻に分析していく予定である。生活扶助基準は年齢別・世帯構成別・地域別に異なっているため、年齢×世帯構成×地域で分析を行うことが望ましい。集計データでの分析は地域別の実態はある程度把握できるものの、年齢別・世帯構成別の実態をより詳細に把握するためには限界がある。したがって、当初の予定通り『全国消費実態調査』の匿名データを用いて分析を行う。『全国消費実態調査』の匿名データでは年齢別・世帯構成別の情報が得られるため、年齢別・世帯構成別の状況を明らかにする。さらに、社会保障審議会生活保護基準部会(2013)で示された検証結果の再検討を行う。 また、厚生労働省では生活保護基準の比較対象として主に年収第1・十分位が用いられているが、そもそも年収第1・十分位を用いる事が望ましいか否かについても検討を行う。恒常所得仮説に基づくと、各年の所得のみを基準とした場合、長期的な経済厚生を反映出来ない可能性があるため、年間消費を用いるのが望ましいと考えられる。さらに、平成25年8月以降の生活保護基準を検討する必要があるため、引き続き平成25年の『家計調査』の集計データを用いて簡単な分析、検討を行う。この分析によって平成25年8月以降の生活保護基準の改正が適当であったか否かを判断できる。
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