2017 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical analysis of impacts of women's old age concern on investment in kinship networks in rural Tanzania
Project/Area Number |
25780180
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
工藤 友哉 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センターミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (30623706)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会保障 / 文化 / 社会制度 / ジェンダー / HIV/AIDS / 寡婦 / タンザニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカにおけるレビレート婚(死亡した夫の兄弟が寡婦を擬似的妻とする社会制度)に関する理論及び実証分析を進めることによって、寡婦を取り巻く生活環境を理解し、一定の政策的知見を得ることを目的とした。農村部では、女性の財産相続権は制限的だが、レビレート婚を行った寡婦は、夫の死亡後も、夫またはその一族の財産を使用することができるため、この意味で、レビレート婚には、寡婦にとっては現在の保険、夫をもつ女性にとっては将来の(老齢)保障の役割があると指摘される。昨年度同様、タンザニア農村部で収集された独自の家計調査データ(データは2015年度に収集し、クリーニング済み)及び世界銀行チームが収集した2次データを用い、レビレート婚に関する理論及び実証分析を進めた。特に本年度は、夫の一族及び女性からなるゲーム理論的考察により、この社会制度が双方の戦略的意思決定の結果維持されていることを示したうえで、その衰退理由を分析した。まず、女性のエンパワメントによる寡婦の留保効用の上昇により寡婦はレビレート婚を維持する誘因を失う。他方、HIV/AIDSが蔓延すると、感染を危惧する夫の兄弟はこの制度を維持する誘因を失う。この際、夫をHIVで失った寡婦はHIV感染者である可能性が高いため、寡婦の再婚確率、及びその留保効用も減少する。結果、レビレート婚衰退に伴い、寡婦の厚生水準は前者の場合上昇し、後者の場合減少する傾向がある。本予測及び女性の出産行動変化に関する理論的予測を上記データにより検証することによって、HIV/AIDSが近年のレビレート婚の主たる衰退要因であることが示された。(若い)寡婦はHIV/AIDSにより伝統的な生活保障手段を失い、以前より不利な生活環境に陥っている可能性が高いため、寡婦に向けた社会保障を充実させる必要性が示唆される。
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