2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25780184
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱秋 純哉 法政大学, 経済学部, 准教授 (90572769)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会保険料の帰着 / 総報酬制 / 操作変数 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会保険料の実質的な負担者を明らかにするために,企業の保険料負担が賃金に与える影響を,企業の保険料率の内生性を考慮して推定した。具体的には,2003年4月の総報酬制導入により,健康保険料率の賦課対象が月収だけでなく賞与にも広がった際に,財政状況が悪い健康保険組合(以下,健保組合)ほど保険料率を大きく引き上げた可能性があることに着目して分析を行った。もともと財政状況が悪く,保険料率を引き上げたいと考えていた健保組合で,総報酬制導入という(各健保組合の被保険者の属性とは無関係の)外生的な出来事を契機に引き上げられた保険料率の変化を用いて推定を行えば,内生性の問題をクリアできると考えられる。 本論文では,2001年から2007年までの健保組合別のパネルデータを用いて分析を行った。すると,総報酬制導入を契機とした保険料負担の増加は,時間をかけて徐々に賃金に転嫁されたことを示唆する結果が得られた。本論文の分析対象期間は物価上昇率の低い時期であり,このような状況下では実質賃金の引き下げによる賃金の調整が難しいため,賃金への転嫁に時間がかかると解釈できる。もしそうなら,少なくとも短期的には保険料負担の増加分は企業の負担となっていた可能性がある。したがって,近年の医療保険制度改革による健保組合に対する拠出金負担の引き上げは,企業活動を短期的には阻害することもあり得るため,このような影響も踏まえて制度改革を行っていく必要があると言える。
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