2013 Fiscal Year Research-status Report
複合型事故災害に対する責任ルールの比較制度分析:実験「法と経済学」による制度設計
Project/Area Number |
25780188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
後藤 大策 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (80432847)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済実験 / 災害リスク / 認識バイアス / 責任負担ルール |
Research Abstract |
複合型事故災害は,自然災害を直接的な起因としつつ,人為的な要因によってその損害を拡大する.その人為的要因の本質は,当事者の自然災害リスクに対する認識と,それに基づいた予防行動とその相互作用である.本研究では,経済実験手法によって当事者のリスク認識とその予防行動とその相互作用を分析することで当事者間のリスク認識バイアスに対応した責任負担ルールの新設計とその検証実験を行うことを目指す. 2013年度は,責任分担ルールがない状況下において,当事者間のリスク認識バイアスを検証するためのベンチマーク実験を行った.特に個人のリスク・損失選好を顕示させるために従来よりもシンプルな実験手法を開発し,予備的な実験室実験を経て修正を行った後,フィールド実験を行った.フィールド実験では,サイクロンという大規模な自然災害リスクに直面しているバングラデシュ沿岸部の農村家計を対象に,リスク・損失顕示選好実験と家計行動調査を行い,各家計のリスク・損失選好データと,2009年の大規模なサイクロン災害の家計行動に対する影響調査データ(災害前後の世帯構成・収入・収入源・資産の変化および居住地選択など)を入手した.これらの家計データを分析することで責任分担ルールがない状況下での自然災害のケースにおいて,個々の当事者のリスク認識にバイアスがどれだけ生じているか,またそこでどのような予防行動を選択しているかを分析し,それらの関係性を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度は,ベンチマーク実験だけでなく,その評価まで終わらせる予定であった.ただし厳密な評価については完了しておらず,初年度の成果としては若干ではあるが進捗が遅れていると判断する.進捗状況に遅延が生じた理由は2つある.1つは災害の各当事者に自分のリスク・損失選好を顕示させるための実験手法の開発に手間取ったためである.大規模な自然災害リスクに直面している途上国沿岸農村地域でのフィールド実験に耐えうる程度に簡単・簡素な手法でありつつ,同時に国際的な学術水準を保持するものであるという,一見対立する課題を同時に解決するために時間を費やした.もう1つの理由は,今回のフィールド実験・調査地であるバングラデシュで国政選挙に伴う政治的暴動(ハルタル)が多発し,実験・調査の開始を1月中旬まで延期せざるを得なかったためである. なお,当事者間のリスク認識バイアスやその予防行動とその相互作用に対して,責任分担ルールがどのような影響を及ぼすかに関する実験室実験については,2014年度の実施に向けて着実にその設計を進めてきた.
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は,災害の各当事者間のリスク認識バイアスやその予防行動,およびその相互作用に対して,責任分担ルールの有無がどのような影響を与えているかに関して実験室実験を実施し,これを分析する.これらは本研究の中核をなす.その結果をベンチマーク実験と比較することによって,責任分担ルールの効果を評価する計画である.被験者(主に学部生)を募りやすい7月に予備実験を行い,修正を加えた後,10月に本実験を行う予定である.再実験を行う必要がある場合には,12月前半に実施する. なお,実験室実験の実施手法であるが,ドイツの若手研究者から最新テクニックに関する情報提供を受けたので,それをうまく取り入れて実施したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は2つある.1つは,他の外部資金を用いてバングラデシュで行ったフィールド実験(ベンチマーク実験)を行ったためである.もう1つの理由は,進捗がやや遅れたため,成果として取りまとめる際の論文校閲等の予算を執行していないためである. 災害の各当事者間のリスク認識バイアスやその予防行動,およびその相互作用に対して,責任分担ルールの有無がどのような影響を与えているかに関して実験室実験を実施する(7月予備実験,10月本実験,12月再実験).この実験参加者に対する謝金支払いに使用額のほとんどを充当する.残りは,成果を取りまとめて発表するための論文校閲費,学会参加費および旅費に当てる.
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