2013 Fiscal Year Research-status Report
動学的就業選択モデルに基づく最適所得税と再分配政策
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25780191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高松 慶裕 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90454016)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動学的最適所得税 / 労働所得税 / 非分割可能な労働 / 所得再分配政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は,就労可能な低所得者に対してどのように再分配すれば良いかという問題を理論的に検討することである。グローバル化の進展や非正規労働など雇用形態が多様化する中で,低所得者向けの再分配政策を再考する必要がある。そこで本研究では,家計の労働供給行動として就業選択行動を採用したMirrlees型の動学的最適所得税モデルを構築し,誘因両立的な所得再分配政策を提示する。 平成25年度は,2期間モデルの下で,就業選択行動の一種である非分割可能な労働を想定し,各期で労働生産性(労働選好)が確率的に変化する状況を想定した。その上で, 1.各種パラメータを設定した上で,シミュレーション分析を行い,政府が家計の情報を持つ完全情報での最善の配分と非対称情報がある場合の次善の配分を導出した。 2.政府が租税政策により次善の配分を遂行するためには,労働履歴に依存した労働所得税が必要となる。通常の労働履歴に依存しない労働所得課税は次善を達成しないが,補完的政策(年金保険または時限的な所得移転制度)を採用することで次善の配分を実現できることを示した。 3.実施予定であった8月22日から25日までの国際財政学会(IIPF)に参加し,この学会で例年多くの発表が行われる最適課税に関する研究動向について調査するとともに,意見交換を行った。これらを踏まえて,成果の一部を,“Dynamic optimal income taxation and the roles of the public pension system and a limited times benefit to low-income households”(片岡孝夫氏と共著)としてまとめた。この論文は,日本経済政策学会第46回中部地方大会や研究会(多摩財政研究会など)で報告し,意見交換を行い,海外雑誌への掲載に向けて改訂作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた通り,動学的環境下で就業選択行動をモデル化し,各種パラメータを設定した上でシミュレーション分析を行い,誘因両立的な労働所得税・再分配政策を理論的に検討することができた。また,国際財政学会へ参加し,最適課税の研究動向について知見を得ることができた。さらに,日本経済政策学会第46回中部地方大会や研究会(静岡大学第3回経済研究会や多摩財政研究会)にて報告し,ディスカッションすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に実施した労働所得税の下での誘因両立的な制度設計の研究を引き続き行う。具体的には,労働生産性を複数化し,家計間で生産性が異なる状況へとモデルを拡張することを検討している。この拡張により,失業者の中に潜在的に高生産性と低生産性の家計の両方がいる可能性を考慮できる。 また,動学的環境では,労働所得税だけでなく,資本所得税の役割にも焦点があてられることが多い。次善の配分を遂行するために資本所得税が果たす役割についても考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施した動学的環境下での誘因両立的な再分配政策の研究成果を活かしつつ,さらに労働生産性を複数化する等,モデルを発展させた理論的研究を行い,望ましい所得再分配のあり方を検討する。また,前年度に検討しなかった資本所得税の役割についても研究を進める。 平成26年度は,設備備品費として,理論的研究に必要な文献の取得を継続するとともに,政策的含意を導くため,各国租税制度,社会保障制度に関する文献取得に使用を予定している。また,旅費として,学会等でこれまでの研究成果を発表する(日本経済学会2014年度春季大会)ためや研究調査のための出張を予定している。
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Research Products
(3 results)