2016 Fiscal Year Research-status Report
Interrelationship among Income, Inequality and Health in Japan
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25780192
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
小西 萌 学習院大学, 国際社会科学部, 准教授 (30589578)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 健康診断 / 不平等 / メタボリック法 / 健康 / 所得 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、日本における所得、不平等と健康の関係に関する研究の一環として、健康診断の受診行動及び健康診断の健康状態に与える影響について分析を行った。健康診断が重大な病気の兆候の発見、予防に結び付くとするならば、健康診断の普及は患者への早期治療等を可能としその重篤化を防ぎ、結果として社会全体の医療費の増加を抑えることが期待される。そこで政府は健康診断の普及に尽力しており、2008年度からは生活習慣病の早期発見と治療を目的にして、特定健康診査・特定保健指導が40~74歳の公的医療保険加入者全員を対象として導入した。しかし、特定健康診査の受診率は2014年度で48.6%であり、目標の70%に遠く及ばない。本研究は、国民生活基礎調査の1995年から2013年の個票を使用して、(1)地域レベルのデータを使用した健康診断の普及要因、(2)個人レベルのデータを使用した健康診断の受診に与える要因、(3)特定健康診査制度の導入が、健康診断の受診率や健康状態、喫煙、ストレス、医療支出等に与える影響を検証した。その際、40歳から対象年齢になるという制度の特徴を利用して、回帰不連続デザインの手法により分析した。分析の結果、(1)地域の経済社会的要因を考慮にいれても、健康診断受診率の地域間格差が残り、また時系列的にも健康診断の受診率の向上がみられないこと、(2)個人レベルの分析の結果から、個人の経済社会的要因を考慮しても非正規雇用者の受診する確率が正規雇用者に比べて著しく低く、また国民健康保険の加入者の受診率は、被用者保険の加入者に比べて著しく低いこと、(3)特定健診の導入が健康診断全般の受診率を高めたものの、健康状態の向上、喫煙習慣、医療費の支出等には明確な効果は認められないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には計画通りに健康診断の受診行動の要因及び健康に与える影響に関する実証研究を行い、有意義な結果を出すことができたから、「おおむね順調に進展している」という自己評価とさせて頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
これから長期間労働がメンタルヘルスに与える影響について調べる予定である。また、平成29年度は本研究プロジェクトの最後の一年になるので、これまでの研究結果を纏めた論文を完成させ、学会や研究会などで発表し、経済産業研究所のディスカッション・ペーパーにする。
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Causes of Carryover |
都合が良くなかったため、国内外の学会発表を見合わせたことから予定していた旅費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実証研究のための参考図書や学術雑誌、分析用の統計ソフトウェアなどを購入する予定である。データ整理・分析に手伝える学生を雇う人事費もかかる。また、研究計画の一部として国内外の学会での論文発表を予定しており、渡航費等の捻出が考えられる。最後に、学術雑誌への投稿にあたり、英語の翻訳費と投稿費も必要となるものと予測される。
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