2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
森田 圭亮 京都学園大学, 経済学部, 講師 (70467265)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 租税回避 / タックスコンプライアンス / タックスシェルター |
Research Abstract |
平成25年度に取り組んだ研究実績の概要は以下のとおりである。まず、当初の研究計画に従って、産業組織論のアプローチを応用しつつ、タックスシェルター産業の拡大を抑制する方法について理論的に分析を行った。本研究では、タックスシェルターの需要者と供給者のうち、どちらを取り締まりの対象にしたほうがより効果的にシェルター市場拡大の抑制につながるのかを明らかにした。非合法的租税回避行為への対抗措置として、納税者への税務調査やペナルティの賦課が有効であることが多くの理論および実証研究において指摘されている。しかしながら、タックスシェルターの場合、納税者へのこうした取り締まり行為が必ずしも租税回避行為の抑制につながらないことが、本研究において理論的に示された。なぜなら、市場における価格メカニズムが原因となって、取り締まり強化が納税者に対してタックスシェルター市場からの退出を促すとは限らないためである。このことは、タックスシェルターへの対抗措置のあり方として、納税者を直接的な形で取り締まるのではなく、むしろ価格メカニズムへ働きかけるようなプログラムを構築することが重要であることを示唆している。また、本研究では、こうした結果を踏まえた上で、タックスシェルターを抑制するためには、納税者の市場参入意欲を削ぐことよりも、プロモーターの商品開発意欲を削ぐことが重要であることを指摘している。具体的には、プロモーターに対してライセンス制度を設けたり、タックスシェルターに結びつきやすいと思われる商品の情報開示や登記を求める制度を設けることが考えられる。こうした制度は、アメリカなどにおいて実例もあり、実行可能であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、当該年度の研究を通じて、産業組織論のアイディアを活用しながら、タックスシェルターの市場に関する組織構造を明らかにすることができた。また、タックスシェルターにかかわる租税回避行動の基本的な構造に関して新しい知見が得られたという点では、研究上の進展が見られたと考えている。ただし、当該年度の研究にはいくつかの課題が残されている。第一に、分析を簡単にするために、シェルター需要者は人間であることが想定されて分析を進めている。しなしながら、多くの実例では、シェルターはむしろ企業に活用されるケースが少なくない。第二に、当該年度の研究では各シェルターと各納税者の相性に注目しながら分析を行ったものの、相性の分布を一様にしなければ分析が進められないという技術的な制約を取り除くことができなかった。第3に、分析を進める上で、納税者のリスク選好を特定する必要があった。第4に、タックスシェルターに関わる当事者を需要者である納税者と供給者であるプロモーターに限定して議論を進めた。こうした点を改善して、より分析結果の質を高めていく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画と新たに浮上した課題の双方を考慮して、3つの観点から研究を進める必要があると考えている。第1に、「研究実績の概要」および「現在までの達成度」でも述べたように、平成25年度の研究は、タックスシェルターの市場構造を理解し、その取り締まり方の要点をつかむ上で一定の成果が出たものの、その理論結果についてはさらに妥当性を摘めていく必要がある。この点について、多面的に更なる考察が必要であろう。第2に、これまでの研究で抑えてきたタックスシェルターの実態は、全体像の一部である可能性が拭えない。タックスシェルター産業の実態把握のために、事例研究などを進める必要がある。この点については、シェルターの仕組みをさらに追求するとともに、各当事者の行動様式を理解する必要があると考えている。とくに、需要者である納税者の租税回避行動や、シェルターの開発に携わるプロモーターのインセンティブについて深く理解をする必要があるだろう。第3に、タックスシェルターはしばしば国際的租税回避スキームと深く関わっていることから、タックスヘイブンの実態やその対策のあり方を把握する必要があると考えている。これらの観点について、今後も引き続き研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は病気などの都合により、当初参加を予定していたAnnual congress of the European Economic Associationをはじめ、海外の学会を中心に、いくつかの学会や研究会の参加を見送ることとなった。当初はその代替として同年度内にThe meeting of the Econometric Societyの冬季大会への参加などを計画していたものの、研究以外の業務上の理由から日程に折り合いがつかなかった。効率的かつ効果的な研究費の活用を考慮し、次年度へ研究費を繰り越すことを選択した。 繰り越した研究費の主要な利用目的が学会や研究会などの参加費用であったため、今年度における国内外の学会・研究会への参加費用に充てる予定である。とくに、現時点において、Annual congress of the European Economic Associationや Asian Seminar in Regional Science、日本経済学会などの本年度の大会への参加を計画しており、これらの旅費や参加費に繰越金額を当てていく予定である。
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