2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
室井 芳史 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90448051)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数理ファイナンス |
Research Abstract |
過年度においては、提案通りジャンプ拡散過程における2項分岐木モデルを用いたグリークス(オプションの様々なパラメータに関する感応度)の計算法について検討を行った。研究の方法は二通り考えることができた。一つ目は、近年、我々の研究グループで研究を行ってきた離散マリアバン解析の考え方をジャンプ拡散過程に適用することである。この方法は、マリアバン解析の考え方を直接離散モデルに適用した手法となっている。数理的に美しくなりやすい一方で、連続モデル同様、アメリカンオプションの感応度計算には不向きな考え方なように感じられる。そこで、この研究ではヨーロピアンオプションの感応度の計算に特化して行った。現在は、数値実験も終了し論文の投稿段階に入っている。もうひとつの手法は直接マリアバン微分に対応する計算をせずに、スッテップごとにマリアバン微分に対応する計算を差分に置き換えていくことである。この方法は、一つ目の方法のように、連続モデルにおけるマリアバン解析を用いたグリークスの計算法と並行して得られる考え方ではないので数理的な美しさは損なわれる半面、1ステップごとに微分計算をすることが可能となっている。よって、アメリカンオプションのグリークスの計算も可能となる。この手法でも、ジャンプ拡散過程におけるグリークスの計算を行ってみた。数値計算結果も良好であり、アメリカンオプションも含めて安定的にグリークスの値が得られている。 グリークス自体は、オプション取引を行う場合に金融実務では基本的な指標であり、より広いモデルにおいて計算できるようになったことは実務においても意義の大きいことであると考える。特に、アメリカンオプションのグリークスの計算は技術的にも難しく、納得のいく結果を得られたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究内容であった2項分岐木によるジャンプ拡散過程におけるグリークスの計算法に関する研究は既に理論構築を終え更に数値計算も終了している。更に、論文の投稿や学会等での発表もいくつかこなしているところである。少なくとも主な研究内容として挙げていた部分に関しては特に問題はなく経過しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に述べたように、主な研究内容であった2項分岐木によるジャンプ拡散過程におけるグリークスの計算法についてはかなりのところめどがついている状況である。今後は、研究会などでの発表やさらなる拡張について考察を行いたい。その一方で、付属的な研究内容であったアジアンオプションのグリークスの研究は余り上手くいっていない。ボラティリティに関する感応度であるベガの計算を行うために、ベガをロー(金利に対する感応度)とテータ(満期までの時間に対する感応度)に分解する公式を導けたものの、展開法を用いたテータの計算は予想以上に数理的に難しいことが分かった。残念ながら、今のところこれ以上の研究は時間の浪費となる可能性が高く、ベガのテータとローを用いた分解公式を取りまとめたところで終わりにしたいと考えている。その代わり、今後は、2項分岐を用いたグリークスの計算法の拡張について、更に研究を行っていきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)