2013 Fiscal Year Research-status Report
発展途上国における貨幣需要関数およびドル化に関する研究
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25780201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
サムレト ソワンルン 埼玉大学, 教養学部, 准教授 (90614371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドル化 / 貨幣需要関数 |
Research Abstract |
本研究は、発展途上国における貨幣需要関数およびドル化に関するものである。ドル化とは、マクロ経済の不安定化がもたらす自国通貨に対する不信感の高まりによって、自国内で米ドルなどに代表される外国通貨が広く使用される現象のことである。平成25年度には、ドル化が進展している経済においてその現象が金融政策にどのように影響を与えるかを検証する。ドル化は貨幣需要への影響を通じて金融政策に影響を及ぼすため、その影響を検証するにあたってドル化に直面している経済における貨幣需要関数の推計や安定性の検証は欠かせない。 本研究では、まず、貨幣需要関数を取り扱っている先行研究を理論的・実証的な両面から詳細にサーベイを行った。実証分析においては、申請者のこれまでの研究を展開する形で、ドル化の現象が非常に進展しているカンボジアのケースに特に注目し、2002Q1から2007Q4をサンプル期間として分析を行った。分析に使用したデータは、カンボジア国立銀行(NBC)および国際通貨基金(IMF)のものであり、サンプル期間について使用した変数のデータの状況を考慮した上で、設定した。本研究では、貨幣需要関数におけるパラメータを推計するとともに、推計したモデルの安定性の検証も行った。さらに、分析の結果からより良いインプリケーションを得るために、カンボジアに赴いて他の研究者との意見交換を行った。現在、こうした研究活動を通じて得られた研究成果をまとめた論文の改善に取り組んでおり、近日中に、国際的学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成の状況については、おおむね順調に進展していると言える。『研究実績の概要』で記述したように、平成25年度において、ドル化が進展している経済においてその現象が金融政策にどのように影響を与えるかを検証することが目標である。ドル化の現象は、貨幣需要への影響を通じて金融政策に影響を及ぼすため、対象国における貨幣需要関数の推計や安定性の検証は必須である。そこで、本研究では、貨幣需要関数を取り扱っている先行研究を理論的・実証的な両面からサーベイした後、ドル化の現象が非常に進展しているカンボジアにおける貨幣需要関数を推計し、推計したモデルの安定性も検証した。さらに、分析結果などに関する考察を深めるために、カンボジア国立銀行やカンボジア国家経済評議会などの研究者と意見交換を行った。このように、本研究において現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドル化の進展には、デメリット(政府のシニョリッジの損失や金融政策の効果を制限することなど)がある一方で、メリット(外国通貨を保有することによる資産の価値の維持など)もあることが知られている。平成26年度において、本研究はドル化の現象が進展している発展途上国において、そうしたデメリットとメリットを検証することを目標にしている。これを達成するためには、今後、次のように研究活動を行う。申請者のこれまでの研究などを発展させる形で、発展途上国の経済の現状に即したモデルを考案し、実証分析やシミュレーション分析などで定量的にドル化の影響を検証する。 今後の分析に必要なデータは、主に平成25年度に収集したものを利用する予定であるが、必要に応じて分析対象国に赴き、さらに収集を進めることも考えている。また、学会などを通じて研究成果を発信し、より良い研究成果を得られるために他の研究者との意見交換も積極的に行う。例えば、今年の11月にタイのバンコクで行われる第14回東アジア経済学会で本研究の成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の分析結果からより良いインプリケーションを得る目的で、平成25年度には国内・外の研究者と意見交換の活動などを行なった。本研究の助成金をできるだけ効率的に使用することにいつも努めていることの一貫として、こうした活動に関わる日程や場所を調整したことにより、旅費が計画よりも少なくてすむこととなった。その結果、助成金の使用残が発生した。 『今後の研究の推進方策』でも述べたように、平成26年度の分析において、必要なデータは、主に平成25年度に収集したものを利用する予定であるが、必要に応じて日本国内の関連機関や分析対象国などに赴き、資料・データを追加収集することも考えている。これに備えて、今後の研究活動に支障が出ないように、発生した助成金の残額を旅費などに使用する予定である。
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