2013 Fiscal Year Research-status Report
企業の資金調達コストとその実体経済への影響に関する実証分析
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25780202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 通雄 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (40580717)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生産性 / 生産関数 / 企業金融 |
Research Abstract |
平成25年度は、当初の計画通り、企業レベルの生産性の推定を中心に研究を行った。企業レベルの生産関数の推定の文献では、近年、中間財投入を考慮する場合、生産関数の同定に問題があるということが認識されている。Gandhi, Navarro, and Rivers (2013)は、ノンパラメトリック推定において、この同定問題をあらためて指摘し、解決策として、企業の短期利潤最大化における中間財投入についての一階条件を用いた二段階推定法を提案した。そこで、本研究では、Gandhi, Navarro, and Rivers (2013)の推定法を用い、日本企業の生産関数の推定を行った。使用したデータセットは、日本政策投資銀行設備投資研究所提供の企業財務データである。 さらに、当該年度には、University of British Columbiaの笠原博幸准教授と東京大学の下津克己教授との共著論文がJournal of the Japanese and International Economies誌に掲載された。(``Does an R&D tax credit affect R&D expenditure? The Japanese R&D tax credit reform in 2003,’’ Journal of the Japanese and International Economies, Vol.31, Pages 72-97, March 2014。)本研究では、主に、2003年度の税制改正による試験研究費の税額控除率の変化を用いて、税額控除が、企業の研究開発費に与える影響を推定した。推定により、税額控除率の効果は有意に正であり、その効果は、企業の負債・資産比率が高いほど大きいとの結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生産関数の推定の際、非線形性の度合いが高く、安定して収束を得るようにプログラムを修正することに時間がかかった。 さらに、1990年代後半の日本政府による銀行への公的資本投入の効果についての研究では、公的資本投入が銀行貸出に与える影響を分析するためのデータ準備に予想以上の時間がかかった。具体的には、Nikkei NEEDS Financial Questに収録されている金融機関ごとの借入残高のデータと日本政策投資銀行の財務データ(上記で推定された企業レベルの生産性のデータも含む)を接合した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究課題の研究計画に沿って、1990年代後半、日本政府によって行われた銀行への公的資本注入政策の効果測定の研究を学術誌上で公表することを目指す。本研究の目的は、銀行への公的資本投入の企業設備投資への影響を推定することであるが、そのメカニズムの確認として、まず、公的資本投入が企業向け銀行貸出に与えた影響を分析する。その際、平成25年度中に得た企業レベルの生産性のデータを用いて、公的資本投入を受けた銀行が、どのような企業に向けて、どれだけ貸出を変化させたのか、企業向け貸出のパターンの変化を詳細に分析する。その後、企業の資金調達コストを明示的に考慮した設備投資モデルの構造推定を行うが、この際、企業貯蓄と、銀行の企業向け貸出の意思決定を考慮できるように、モデルを拡張する。最後に、推定された構造モデルを用いて、例えば、1998年3月に1.8兆円の規模で行われた銀行への公的資本注入政策が行われなかった場合の設備投資を計算し、それを実際のデータ上で計算される設備投資と比較し、公的資本注入政策の効果を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究を進める作業に集中して、学会参加を控えたため。 平成26年度以降は、関連分野で業績のある研究者からのコメントを得るため、海外の学会に積極的に参加する予定である。
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