2014 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク理論を用いた金融システムのシミュレーション分析
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25780203
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 照義 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10387607)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金融ネットワーク / システミック・リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、金融システムを複層的ネットワークと捉え(multiplex network)、新しい金融ネットワークモデルを構築していくための第一段階とすることを大きな目的とした。具体的には、金融機関や企業が互いに資金を貸借する上で発生する優先劣後関係を複層ネットワークの各レイヤーとして表し、解析的に分析可能な基準モデルを構築した。このモデルでは、従来から扱われてきた単層的なネットワークモデルと異なり、各レイヤーが互いにフィードバックしあう現象が連鎖破綻の原因になるため、連鎖破綻の可能性はより高くなりうることを示した。また、連鎖破綻の起こりうる範囲を解析的に求め、ある特定のパラメータ下で連鎖破綻の可能性が最も低くなることを明らかにした。この結果はシミュレーションによっても正確に確かめられた。この研究は従来標準的に用いられてきたモデルを特殊ケースとして含むものであり、これまで指摘されなかった要因が金融危機の原因となりうることを明示的に示した点で貢献がある。また、リスクが最低になるという意味で最適なパラメータを求めており、金融市場のマクロプルーデンスにも新たな視点をもたらす。 これ以外の実行中の研究として、銀行間の資金ネットワークに加えて保有資産のfire sale が連鎖破綻を引き起こすモデルについて、複層的ネットワークの枠組みでモデル化をおこなっており、現在引き続き取り組み中である。複層ネットワークの枠組みでモデル化することで、ネットワーク理論における分析手法が応用可能となるため、経済学にとっても新しい分析ツールを提供することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で書いたとおり、新たな金融ネットワークモデルのモデルを1つ構築できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーションなど高度なプログラミングや解析が必要になる部分については、今後も共同研究者と協力して進めるなど、効率的に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に投稿中の論文についてAPC相当額を割り当てていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文が掲載され次第すみやかに使用する。
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