2013 Fiscal Year Research-status Report
MBOによる株式非公開化のパフォーマンス改善効果に関する実証分析
Project/Area Number |
25780211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata Sangyo University |
Principal Investigator |
川本 真哉 新潟産業大学, 経済学部, 講師 (60468874)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | MBO / 株式非公開化 / コーポレート・ガバナンス / リアライメント / バイアウト・ファンド |
Research Abstract |
本研究の目的は、MBO(マネジメント・バイアウト)による株式非公開化が買収後のパフォーマンスに与える影響について検証する点にある。MBOによる非公開化によって業績に改善傾向は見られるのか、事後的なパフォーマンスに対し、MBOにともなうガバナンス構造の変化はどのように作用しているのか。これらの検証を通じ、日本におけるMBOの経済的機能を解明しようというのが本研究の課題である。 上述のような課題にアプローチするため、本年度は分析の基礎となるデータセットの構築に取り組んだ。具体的には、(1)サンプル企業を確定した上で、(2) MBO実施前後のパフォーマンス、ガバナンス構造に関するデータ構築を進めた。(1)に関しては、2001年以降にMBOによって上場を廃止した企業を対象とし、レコフ社『マール』等の資料から該当案件の抽出を行った。一方、(2)に関しては非公開化後の情報収集が作業の中心となり、帝国データバンク社『COSMOS1』等の情報を網羅的に利用し、収益性や成長性、所有構造や資本構成、バイアウト・ファンドの関与の有無に関するデータ構築を行った。以上のような作業を通じ、実証分析に必要とされる基礎的なデータをほぼ準備することができた。 また本年度は、事後的な分析の前提となるMBOの動機に関する追加的な検証も試みた。すなわち、MBO実施企業の買収プレミアムの決定要因についての分析であり、これまで筆者らが行ってきた研究の対象期間、サンプル・サイズ、仮説を拡張し検討を行った。サンプルは2000年度から2011年度までにMBOによって非公開化した101件である。分析の結果、上場維持コストの削減や負債の節税効果はプレミアムの多寡を決める要因とは判断できず、株価の過小評価やバイアウトを経営陣が主導することから生じるリアライメント効果が主要な要因となっていることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はMBO案件のサンプル収集、それら企業群の非公開化後を軸とする財務・ガバナンス構造のデータセット構築に重点を置いていた。年度内に概ね所定の目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、(1)本年度に構築したデータセットの拡張、及び(2)そのデータセットを用いた実証分析に着手する。 まず、データセットの拡張に関しては、MBO実施企業と比較するためのペア企業の特定に注力する。具体的には、MBOサンプルと企業規模、業種、パフォーマンス等の特徴から企業属性を可能な限り近似させた非MBOサンプルを比較対象として抽出し、MBO実施企業と同様のデータセットを構築していく。これらペア企業との比較を通じ、MBO実施後のパフォーマンス改善効果をより相対的に評価することが可能になる。 次に、以上の手順で構築されたデータセットを用いて、ポストMBOのパフォーマンスとガバナンス構造の因果関係に関する計量分析を行う。ここでは、MBO実施後のパフォーマンスの状態に対し、所有構造、資本構成等のガバナンス構造のいかなる要因が影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。 さらに、一連の研究成果は、学会・ワークショップ等で報告するとともに、学術雑誌へ投稿することを計画している。
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Research Products
(2 results)