2015 Fiscal Year Research-status Report
大都市工業と経済発展―日本経済史における都市と地域―
Project/Area Number |
25780214
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
今泉 飛鳥 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 講師 (60613461)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 経済史 / 近代日本 / 東京 / 都市 / 産業集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、経済発展や都市間の関係性を念頭に都市所在工業の実態とその歴史的変容を解明することである。具体的には、1. 特許、2. 工業教育、3. 取引関係、そして4. 災害からの復興過程の4点を分析の起点とする計画である。本年度(第3年度)は、(1)8月の国際学会(XVIIth World Economic History Congress、WEHC2015) でここまでの研究成果を発表するとともに、(2)上記の分析起点のうち主に2.工業教育に取り組む計画としていた。 (1)計画時に予定していた1セッションのオーガナイズ(共同)に加え、海外の研究者らにより組織されたセッションにも参加した。 前者のセッションでは本研究のこれまでの成果を踏まえ、工場の起業行動について考察を深めた。移民、ジェンダーといったセッション内の他の分析ともあわせて考察し、起業行動が労働市場、社会保障、産業構造等の特質と変化を体現する結節点となるとの知見に至った。 後者は特許とイノベーションのあり方を近代以前の制度との関係で考察するセッションである。ここでは東京における人力車業創始者の事例を通して、特許制度導入前後の社会的動向を分析した。この分析は、「特許取得という行為は何を意味するか」を考察することで、特許の定量的な分析の方向性を明確にする意義を持つ。この論考については9月にも明治時代の経済を考察する国際的な研究会において議論したのち、日本語論文としてまとめ、投稿中である。 (2)ここまでの研究遂行を経て、都市工業やそこでの起業行動を考えるうえでは、企業間のみならず個人間の関係性が重要であるとの知見に至った。その実態に迫る分析となるよう、教育によるネットワークに関する資料収集を進めている。 なお7月には、『経営史学会の50年』の分担執筆分(昨年度の報告書に記載済)について口頭発表の機会を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画時から要と考えていたWEHC2015において、セッションオーガナイズ(共同)及び複数の発表を行うことができた。これに向けてのセッション内での知見の共有も有意義であった。これらの結果、大都市工業についての地理的・定量的な分析に、質的な分析や比較による考察を加え、研究計画時の想定以上に議論を深化させることができたと考えている。加えて、研究者間の国際的なネットワークも充実させることができた。 これらの分析と考察の結果は論文にまとめる準備を進めている。特許制度に関する分析は学会誌に投稿中である。 また、研究計画においては4つの分析起点を想定しているが、ここまでに行った東京都公文書館等での資料収集において、計画時の順序とは多少前後しつつも、取引関係などの地域内ネットワークの傍証となりうる資料を併せて収集することができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるため、計画されている各実証分析の遂行とともに、それらを糾合し、本研究総体としての歴史的知見の提示を目指す。このために、本研究を進めるなかで重要性を再認識した起業行動に着目する分析視角を中心とし、各分析相互の関連も明確にして考察を深める予定である。
|
Causes of Carryover |
WEHC2015での発表が叶わない場合も想定し、国際学会に複数参加することを見込んだ旅費の計画となっていた。しかしWEHC2015において複数の発表の機会を得たこともあり、他の国際学会への参加は行わなかった。一方で当初の予定にはなかった海外での研究会に出席したものの、旅費収支には余裕が生じた。このほか、物品費にも若干の余裕が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究執行のため、学術書購入や資料収集のための旅費、複写費等、及び収集した資料の整備・データ入力等に使用する。
|
Research Products
(3 results)
-
-
-
[Presentation] 産業集積2015
Author(s)
今泉飛鳥
Organizer
経営史学会関東部会大会
Place of Presentation
法政大学市ヶ谷キャンパス(東京都・千代田区)
Year and Date
2015-07-25