2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780217
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
大島 朋剛 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (20619192)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 生産組織 / ブランド / 酒造労働 |
Research Abstract |
本研究は、20 世紀前半の日本清酒醸造業が、原酒のブレンド工程を通じて全国的なブランドを確立してゆくプロセスの解明を目的としているが、初年度にあたる平成25年度は、ブレンドを行うための原酒がいかにして製造されていたかという点について、醸造工程に関する史料、とりわけ酒造労働にかかわる史料の調査と分析を行った。 兵庫県西宮市の公益財団法人白鹿記念酒造博物館に所蔵される辰馬本家酒造株式会社関係資料の中には、清酒を製造する酒蔵で働く蔵人の職位、賃金、労働機関を記した帳簿が明治初年から同30年代まで残されており、蔵人の移動や昇進の仕方をある程度把握できそうなことが明らかとなった。また同資料群の中からは、大正期から昭和初期にかけて、時に30以上に及ぶ酒蔵の各杜氏や三役と呼ばれる上級労働者の成績表および賃金・賞与の一覧が発見され、写真撮影を行ったうえで、それら史料からデータベースの作成を実施した。また、灘酒造業を支えた丹波杜氏に関して理解を深めるため、研究実施計画でもあげたように酒造労働に関する図書や資料を少しずつ集め、それらを読み進めることも史料調査等に並行して行った。 当初の研究計画にはなかったが、当該年度中には秋田県鹿角市の旧関善酒店への史料調査も実施した。同酒店は、地場の酒造メーカー兼販売店であったが、(1)近くに鉱山を多く抱え、鉱山労働者の清酒消費を追えること、(2)御当主が大阪大学工学部醸造科出身者でかつその後醸造試験所の研究員をしていたことの2点が、今後の研究計画におおいに関係することが明らかとなった。また、当該年度末には、平成26年度以降の研究実施のための予備調査として、広島県の酒類総合研究所を訪れ、その前身である醸造試験所と同試験所が実施した新酒鑑評会関わる資料を閲覧した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酒造労働に関する調査は、蔵人の移動・昇進ルートを探る資料の収集ができたことが大きな成果であったが、明治20年代に一部欠落史料があるため、今後も継続して調査を続ける必要がある。ただし、それを一部補完する資料を入手できたこともあり、総合的な分析結果を提示すべく、今後の研究を進めてゆく。 蔵人にかかる史料調査とそれを基にしたデータベースの作成をほぼ終えたため、本科学研究補助金申請時の研究計画は概ね達成されており、区分(2)に該当することが適当であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来、酒造労働の現場は、出稼ぎ労働者たる蔵人によって担われていたが、高等専門機関における醸造学科を卒業した人材が徐々にその中へ混じりこんでゆくこともまた近代日本酒造業の特徴であると考えられる。 当面は残された酒造労働に関するデータベース作成の作業を継続しつつ、当初の計画通り、高等教育を受けた技術者の動向に関する調査を行う。具体的には、大阪大学などの醸造科を卒業した人々の進路に関する資料調査や、現場におけるヒヤリングを伏見等の酒造メーカーにおいて実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は大きく以下の2点による。 (1)予定していたデータ入力作業を研究実施者本人で行ったため、人件費・謝金として予定していた額を使い切らなかった。 (2)資料の複写費として予定していた部分を、デジタルカメラ等による撮影で代替できたため、予定した額を使い切らなかった。 今後、酒蔵の蔵人のデータや大学の醸造科卒業生のデータなどからデータベースを作成する際に、入力補助が大量に必要となるため、その部分に次年度使用額を充てる予定である。
|