2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25780229
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
糸久 正人 法政大学, 社会学部, 准教授 (60609949)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 標準 / 企業戦略 / エコシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「標準がどのようなメカニズムで支配性を獲得するのか」というメカニズムを明らかにすることが目的であった。本年度は4つの観点から定性的・定量的研究を行った。第一に、「標準の意義と支配性」という観点からは、標準をとりまく各ステークホルダーに注目し、標準のプロバイダーおよびユーザー、それぞれにとって標準の意義が異なること、ステークホルダー間の相互作用によって標準の支配性が決定されることを、工作機械産業におけるCNCの事例をとりあげて議論した(研究成果はItohisa(2015)を参照)。 第二に、「企業戦略と標準」という観点からは、①生産における標準と②標準化戦略の本質的意義をとりあげた。①については、生産活動の流れづくりを意識したグローバル標準としてのTPS(トヨタ生産システム)を分析した(研究成果は、富田・糸久(2015)を参照)。②については、標準にはコスト削減効果とイノベーション促進効果という両義性があることを示し、標準形成の原形はコンソーシアムで行い、それをもとにデジュリ標準にもっていくことで支配性を獲得するという企業戦略を提示した(研究成果は糸久(2016)を参照)。 第三に、「中小企業と標準」という観点からは、主に技術を広げる(標準)ことと技術から儲ける(特許、ノウハウ)ことを両立したオープン&クローズ戦略の事例集を作成した。本研究の成果は特許庁HPで公開されている。 第四に、「エコシステムと標準」という観点からは、地域イノベーションエコシステムの枠組みを提示し、長崎EV&ITSコンソーシアムの事例を通して、知識創造の場としてのオープンエコシステムと、地元にビジネスを還元するためのエコシステムといった二重構造のエコシステムが必要であることを示した。 このように標準の支配性獲得に関する実証研究を行ってきたが、これらをとりまとめる研究成果としての論文は、現在、学会誌に投稿および査読修正中である。
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