2014 Fiscal Year Research-status Report
開発活動の場所が成果に影響を与えるメカニズムの解明
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25780242
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
久保田 達也 成城大学, 社会イノベーション学部, 専任講師 (20634116)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 研究開発活動 / 中央研究所 / 質問票調査 / 研究開発者の探索活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで十分に解明されてこなかった研究開発活動の組織上の位置づけと成果との関係を、特に研究開発者の活動に注目しながら明らかにするものである。 平成26年度は、昨年度実施した中央研究所の研究開発者を対象とした質問票の分析とインタビューの実施、および来年度実施予定の質問票調査の調査票の策定を行った。 本年度の成果を要約すると以下の通りである。第一に、事業部に所属した経験のある研究開発者と経験がない研究開発者との間には、何を目的として開発を進めるのか(志向性)に大きな違いがみられた。第二に、志向性の違いが、研究開発における探索活動に有意な影響を及ぼすことが示された。具体的には、知識の拡大を目指して活動に取り組む研究者ほど、幅広い探索を行う傾向にあり、事業貢献を目指す研究者ほど他社の知見を利用しない傾向があるといったことである。第三に、その結果として探索活動の違いが特許数などの成果変数に影響を与えていることも明らかになった。 以上の結果から、研究開発活動の位置づけが、研究者の志向性、探索方法を経由して成果に影響を与えることが示唆された。また、事業貢献を強く目標として考える研究者ほど、他社知見を利用しない傾向にあることも示された。近年、中央研究所でも事業貢献が強く求められたり、研究所と事業部との間での人材交流などが積極的に行われたりしているが、このことは研究開発者のある種の探索を阻害するなど負の側面が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問票調査の分析とインタビューの実施が今年度の達成目標であったが、それらをほとんど完了させることができた。また、調査から新たな知見を導き出し、次年度に行う質問票の作成を行った。加えて、国内外の査読付きのジャーナルへの論文投稿も積極的に行った。ただし、論文は掲載までには至っておらず、経営活動に対するインプリケーションを十分に導出できたとはいえない。以上のことから上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
分析から導き出された新たな仮説を検証することを目的に、中央研究所を対象とした第二回目の質問票調査を行う予定である。具体的には、研究開発者の事業部での経験や事業部との関係の深さが、研究開発者の行動や成果にどのような影響を与えるかを調べる予定である。 研究所が果たす役割をさらに深く考察するために、日欧の半導体関連企業(特に設計関連企業)を対象とした比較分析も行う予定である。中央研究所や研究部門の機能の違いや成果の違いを、研究所ごと、国ごとに比較することで、どのような特徴をもつ研究所の成果が高いかを明らかにし、研究所の果たしている機能や役割を明らかにする。半導体関連産業を選択する理由は、この業界のイノベーションのサイクルが速く、中央研究所や研究部門の活動が成果に大きな影響を与えるためである。 年度の後半は、調査結果・分析結果をまとめる作業を並行して行い、国際学会や国内外のジャーナルで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
当初は国際学会での発表を予定し、交通費・宿泊費を計上していた。しかし、質問票作成やインタビューに多くの時間を要したため、成果報告の方法を学会発表ではなく、次年度に予定していた国際ジャーナルの投稿へと切り替えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への発表のための費用に使う予定である。また、半導体関連企業の比較分析の調査に使うことを計画している。
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