2016 Fiscal Year Annual Research Report
Innovation and Brand Meaning in the Watch Industry
Project/Area Number |
25780246
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
大竹 光寿 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (40635356)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織慣性 / ブランドマネジメントの慣性 / 正統性 / 創造的原点回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1990年代後半以降、日本企業の時計事業の収益性が低下した理由を、製品の技術的側面のみならず、技術や製品に対する当事者の解釈に着目して明らかにすることにある。本年度は、ウォッチ産業に属している各主体が外部環境の変化に上手く対応できないという側面について、組織慣性に関する理論的知見を整理した上で事例分析を行なった。 イノベーション研究では、資源配分とルーティンに関わる2つのタイプの組織慣性が検討されてきた。組織内に生じた慣性について、マーケティング研究では「資源ベースの戦略論」や「探索と活用」に関わる知見を援用しながら、主に新製品開発における組織能力に焦点を合わせて議論してきた。 事例分析で明らかにされたのは、ウォッチメーカーや小売店といったウォッチ産業に属する多様な主体が、技術資源や組織能力のみならず、ブランドという資源が足かせとなってリブランディング代表されるブランドの革新が阻まれてしまうという慣性に直面していることである。後者の点について具体的に言えば、ブランドの革新が阻まれてしまうのは、変化する市場環境に危機感を抱いていたりそれを脅威と見なしていても、ブランドに対する知識という市場に蓄積された資源に対して確固たる認識が生まれているからである。こうしたブランドマネジメントに関わる慣性は、ブランドのあるべき姿が再構築されることで緩和されうる。さらにこの再構築は、ブランドの原点に立ち返りそれを現在直面している状況に合わせて解釈するという創造的原点回帰や、市場変化を機会とみなす別組織の立ち上げとその組織との緩やかなつながりなどによって促され強化される場合がある。 ブランドマネジメントの慣性に関する議論については、「ブランドマネジメントに関する慣性の強化と緩和」と題した論文(『マーケティングジャーナル』146, 2017 in press)にて発表される。
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