2013 Fiscal Year Research-status Report
クリエイターの創造性と企業間ネットワークの適合モデル:音楽産業の価値創造システム
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25780248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永山 晋 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (10639313)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク論 / ブリッジング / クリエイティブ産業 |
Research Abstract |
2013年度は当初の計画通り、音楽産業の関係者へのインタビュー調査、文献レビューを通じた仮説構築、予備分析、定量データ分析に向けたデータベース構築を行った。 得られた実績は以下の3つである。1つは、The Association of Japanese Business Studiesでの発表である。当該発表は、企業がクリエイティブな製品を他社と協力しながら経済的価値に結びつけるうえで、探索と活用を同時追求していかなければならない点に着目し、定量分析を行ったものである。音楽産業における探索とは、将来的な収益をもたらすアーティストの創出(新規性の追求)であり、活用とは現状の価値創造の効率性を意味する作品あたりの平均収益(効率性の追求)とした。分析の結果、新規性の追求は、新規のパートナーと恊働が有効だが、あくまでアーティストマネジメントを担うプロダクションとの恊働が鍵であることが明らかとなった。一方、効率性の追求は、既知のパートナーとの繰り返しの恊働が有効だが、プロモーションなどを担う音楽出版社との恊働が鍵であることが分かった。 2つ目は、Strategic Management Society での発表である。当該発表は、トルコでの発表のフィードバックを踏まえ、より精緻化した分析を行った結果を用いた。 最後は、経営戦略学会での学会発表である。創造性を高めるネットワーキング行動として、異なるネットワーク・クラスターのメンバーと結びつく「ブリッジング」に着目し、自らのブリッジングによって生み出される自らの経済的価値よりも、自らのブリッジングによって促される他者のネットワーキング行動に着目した。そして、仮説構築は、自らのネットワーキング行動を通じて、他者のネットワーク構造の変化、新たな情報の創出という2つのメカニズムから、他者のネットワーキング行動を説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の研究活動を通じて達成すべき主な目標は次の2つであった。1つは、業界関係者へのインタビュー調査ならびに文献レビューによって仮説を構築することである。もう1つは、公刊資料から収集したデータを収集し、仮説実証用の定量データベースを構築することである。 各目標の達成度について簡単に説明する。1つ目の仮説構築については、今後分析の進捗に応じて修正する可能性はあるものの、ほぼ完成することができた。2つ目のデータベース構築については、想定外の作業が生じたため、完成度は80%ほどとなっている。以下、具体的に説明していく。 1.仮説構築:本研究の趣旨は、創造産業の価値創造のシステムを社会ネットワークの観点から明らかにすることである。先の研究実績で説明した通り、インタビュー、先行研究から、作家間での「ブリッジング」というネットワーキングが価値創造の鍵であることが明らかとなった。ブリッジングとは異なるネットワーク・クラスター間を橋渡しすることである。しかし、ブリッジングは信頼が培われていない新たなプレイヤーとの連結であるため、常に良い結果をもたらすわけではない。そこで、本研究は、いつ、どのような状況でブリッジングを行うと価値創造を最大化させうるかという点についての仮説構築を行った。 2.データベース構築:当初の予定通り、1968年から2005年までの日本の音楽産業における約25,000の楽曲制作プロジェクトについてのデータベースを構築した。当該データベースには、楽曲の売上げ、ランキング、アーティスト、作詞家、作曲家、編曲家、発売レコード会社、アーティストの所属プロダクション、楽曲の著作権を保有する音楽出版社のデータがある。しかし、現状のデータでは、作家間のネットワークを作成する際にアーティストが作詞、作曲、編曲を兼ねる場合の重複が取り除けない。この処理が想定外の作業であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究活動ならびにそのアウトプットは以下目標としている。まず、6月までにデータベースを完成させる。そして、7~8月は既に構築した仮説の実証分析を行う。そのアウトプットとして、9月に日本経営学会での学会発表を行う。さらに、12月までに論文を執筆し、2015年度のAcademy of Management(AOM)もしくはStrategic Management Society(SMS)の年次大会に投稿する。2015年2~3月は、『日本経営学会』、『組織学会』などの国内学会誌に論文を投稿することを目標とする。 次に2014年度の研究推進方法を説明する。一つは、デスクトップPCの導入による、データ分析と論文執筆の同時並行作業である。2013年度の研究活動を通じて構築した仮説、データセットを考慮すると膨大なサンプルサイズとなることが明らかとなった。分析期間における音楽作業のネットワークを構成する作家の数は1万以上にのぼるからである。これまでノートPCによって分析を試みていたが、処理時間が膨大にかかってしまっていた。そこで、ある程度高速なデスクトップPCを新たに導入することで、分析結果を早く得られる。統計分析と執筆を同時並行することで、作業の効率性を高められると考えられる。 もう一つは、インフォーマル研究会での発表である。筆者は経営学分野で海外トップジャーナルに掲載した経験をもつ研究者から構成されるインフォーマル研究会の運営を行っている。その研究会での発表者は事前に英語論文を用意し、英語で発表を行う必要があり、それが年に4回行われる。毎回1人の研究者のみが発表するため、集中して多数のフィードバックが得ることができる。2014年度は、2015年度のAOM、SMSに投稿する前に、当該インフォーマル研究会で発表することで、国際学会で発表可能な水準に論文の質を高めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越し金は10円であるため、翌年度の使用計画に対して影響はない。 2014年度の直接経費である100万円の使用計画を以下に説明する。まず、業者へのデータ入力の委託費として60万円を計上する。既に、作業の委託を予定している業者からは見積もりをとっており、60万円の範囲内で行えることが明らかとなっている。次に、インタビュー調査のテープ起こし費用として10万円を計上する。インタビュー1回につき2時間ほどの時間がかかり、2時間のテープ起こし費用は約2万円であるため合計10万円がかかる。そして、遠方調査、学会発表にかかる移動費として10万円を計上している。その他、消耗品として、書籍、印刷用用紙、インク、文房具などの購入費として5万円、用品費として統計分析用のデスクトップPCの購入費として15万円をそれぞれ計上する。
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Research Products
(4 results)