2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780258
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
善本 哲夫 立命館大学, 経営学部, 教授 (40396825)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | モノ・サービス / 統合型事業システム / トータルプロセス / 経験価値 / 顧客評価能力 / 価値創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は製造業を対象に、「サービス化」や「収益源」といった製造・サービスの比較研究や対比的特性把握ではなく、また製造・開発活動に偏重しがちな「ものづくり経営研究」の枠を超えて、モノ事業とサービス事業を統合的に捉える「統合型事業システム」の全体像と「トータルプロセスの実態」を具体的に描き出すことを目的に調査を進めてきた。本年度はモノ及びサービスで個別に論じられる傾向にある「価値創造」や「コトづくり」を、モノ事業とサービス事業の一体化に焦点を当てることで、論点整理を試みた。また、研究代表者として、産学官連携による「ものづくりとソリューション研究会」を複数回開催し、モノ・サービス統合型事業システムのありようを念頭にディスカッションを展開した。本研究会では、昨今の製造業で注目を浴びるドイツ提唱の「Industry 4.0」を取り上げ、CPSやIoTなどITや機械の知能化によってモノとサービスの関係性を変革しようと試みるケースに着目し、モノ事業とサービス事業の動向を捉えようとした。 またモノに偏重しがちな科学技術の実用化を社会実装の論点から捉えることで、モノ・サービス統合型事業システムの事前設計に関する検討を行った。当該検討により、個別ケースの考察を超えた「価値創造」のありようについて、改めて過年度に試みた「顧客評価能力」や「コトづくり」、「経験価値」の発想をどのように統合型事業システム設計及び運動メカニズムに落とし込むかの論点整理を実施することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製造業のモノ事業とサービス事業の相互補完的な関係性を事業システム概念から取り上げ、その視点から産学官連携型の研究会を複数回実施し、そこでは特に昨今のモノ・サービスの関係性変革の兆しを議論し、またインタビュー調査をもとに、「モノ・サービス統合型事業システム」の一つの類型を捉えるところにまで研究が進んだ。他方で、こうした統合型事業システムが、各企業による事前に周到な準備・検討を行った「意図的な事業デザイン」によるものであるかどうかの検討ができていない。そのため、「顧客評価能力」や「コトづくり」、「経験価値」の発想を事前設計に落とし込む課題について、モノを中心とする科学技術の実用化を社会実装の視点から捉え、個別ケースを超えて、意図的に統合型事業をデザインする論点整理を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
人工物である「モノ」と「サービス」の組み合わせで捉える「トータル商品」の論点は、サービスマネジメントやマーケティングの先行研究でも考察されている。しかしながら、他方では、同一企業(グループ)によるモノとサービスを「事業システム」の論点から捉える研究は、ほとんどなかった。現在、工作機械・産業用ロボットや建機等にみるB to Bでは、アフターマーケット(サービス)に着目する研究や事業が活発化している。しかしながら、他方ではB to Cでは、アフターマーケット等にみるサービス事業・部門・業務をB to Bとの比較検討から実施した研究はほとんど存在せず、また「製造業」の立脚点である工業製品(モノ)事業を基軸とし、そのビジネス領域におけるトータルプロセスの中にサービス事業を位置付ける作業も研究動向としては脆弱である。製造業研究、ものづくり経営研究における、「モノ・サービスの一体型で事業システムをデザインする」ことの意義や、それらによる競争優位獲得の論点を明らかにすることが今後の研究の方向性である。こうした論点は、事前の意図的な「モノ・サービス統合型」の事業デザインに関する研究へと向かうことになる。特に、CPSやIoTなど、昨今の製造業で話題となっている論点を取り上げ、科学技術の進歩や実用化の方向性を捉えながら、モノ・サービスの新たな関係性を捉えていく作業を展開する。こうした関係性を捉える興味深いケースとして、多くの異なる事業領域を統合して展開されるスマートコミュニティ事業がある。当該事業領域へのインタビューや現地調査を軸に展開する。
|
Causes of Carryover |
2014年度に実施した新たなケース対象先のフォールドワーク調査によって収集した資料・データの分析及び考察に時間を要し、追加調査実施が困難になったことが理由である。研究成果をより充実したものとし、さらに高度化させ、論文として成果発信するには2014年度資料の精査が不可欠であり、かつ追加調査の必要性から、補助期間を延長する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加調査のための研究旅費として使用し、また文献資料購入費及び学会発表のための出張旅費として使用する計画である。
|