2014 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナル化による競争優位構築:新興国のオートバイ産業と日本企業
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25780263
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三嶋 恒平 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (90512765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イノベーション / グローバル化 / インド / トランスナショナル化 / オートバイ産業 / フィールドワーク / 新興国市場 / 企業戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はインドでの調査を通じた新興国地場系企業の実態把握に注力した。日系企業が寡占的な地位を占めるオートバイ産業においてインド市場は地場系企業がマジョリティを握り、さらには近年輸出も増大させている。そのため、インドの地場系企業のうちオートバイの完成車企業を5社訪問し、経営課題について議論するとともに生産ラインの見学を行った。 あわせてこうしたインドに代表される新興国市場で競争を展開する日本企業に関しても実態調査を繰り返した。特に生産拠点として具体的なベンチマークのもと厳しい競争を行う地方工場とそれを取り巻く地域経済についても調査を行った。そこではトランスナショナルの新興国から日本というベクトルについてもあわせて検討を行った。 平成26年度はこうした実態調査に加え、学会にも参加し、多国籍企業を巡る理論の確認も行った。さらに5月には平成25年度に本研究費による実施したバングラデシュ調査を踏まえた学会報告を行った。また、文献サーベイを通じて、調査を通じて明らかになった事実が理論的にどのように考えられ、あるいは理論に対してどのようなインプリケーションを与えうるかという考察も深めることができた。 このように平成26年度の研究は調査を通じた実態把握、文献サーベイと学会参加を通じた理論研究の両者をバランスよく進めることができた。新興国におけるイノベーションとそれのグローバルな組織での共有に関する実態調査による情報の収集と整理を行うことができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書においては次の3点を平成26年度(2年目)の目標とした。第1に、新興国でのイノベーションの創発に関する情報収集と実態解明である。これについてはインドと日本を中心とした実態調査を通じて達成できたと考える。第2に、日本企業にみるグローバル組織でのイノベーションの共有に関する要因分析である。これについては、調査を通じて新興国進出先の取り組みが明らかになってきた。残る課題は日本企業の本社側がそうした実態をどの程度把握した上で、事業戦略を構築し、実行しているのか、さらには全社戦略に落とし込んでいるのか、という点であるだろう。第3に、設定課題と要因分析、フィールドワーク結果の妥当性の検証と論文執筆であった。この点についてはまず2014年5月の学会報告において、調査や設定課題、論考のありようについて意見をもらうことができ、考察を深化させることができた。また、2014年11月のシンポジウムでは研究ディシプリンやフィールドワークについて報告し、調査のありようやそこからの理論展開について示唆を得ることができた。 なお、平成26年度の調査対象国としてインドネシア、バングラデシュとしていたが、市場や成長性の実情を鑑みてオートバイ産業で重要性を高めてきているインドを調査対象国とした、という変更点があった。これはグローバル企業のイノベーションの共有の理解において有意義な変更であったと考える・ 以上の点から、本研究は申請書の計画時点と比較して、対象国で若干変更があったものの、調査対象から得ようとするインプリケーションという点で相違はないということとともにおおむね順調に進展しているといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は本研究の最終年度にあたり、研究主眼である日本企業の新興国でのイノベーション創発とグローバルな組織共有に関する理論モデルの構築を図っていく。そこでこれに向けてこれまでの実態調査と学会報告を踏まえながら論文執筆を進めていく。さらに6月にはフランス・パリでの学会報告も予定している。オートバイ産業は産業の重要性の大きさに比べ、英語文献が多くはないことから、英語での発表を行い、研究成果をグローバルに発信していく予定である。
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Research Products
(6 results)