2013 Fiscal Year Research-status Report
消費者の購買履歴に応じる価格差別戦略の理論的・実証的研究
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25780270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鄭 潤チョル 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (10439218)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 商業学 / マーケティング経済学 / 応用ミクロ経済学 / ビジネスエコノミクス |
Research Abstract |
平成25年度にはミクロ経済学やマーケティング関連の研究実績をリサーチし、価格差別戦略に関する文献研究を行った。Caminal and Matutes (1990)、Caminal and Claici (2007)等は既存顧客割引に関するモデル分析を行っており、Fudenberg and Villas-Boas (2007)、Zhang (2009)等は新規顧客割引に関する研究を行っている。さらに、Shaffer and Zhang (2000)、Chen and Pearcy (2010)、Shin and Sudhir (2010)等は一つのフレームワークの中に既存顧客割引と新規顧客割引の両方を分析することでどちらの顧客を優待すべきかに関して様々な結果を導出している。しかし、多くの既存研究は既存顧客割引か新規顧客割引かを最初から前提してモデルを展開しており、どのような状況において企業がどちらの割引を戦略的に選択して実施するのかに関する議論はほとんどされていない。 本研究の成果は、消費者の購買履歴に応じて価格を差別する戦略(Behavior based price discrimination)が消費者のある特性に依存していることを提案した点にある。すなわち、消費者が惰性的な特徴を持っているのか、それとも冒険的な特徴を持っているかによって企業の政策は大きく変わることになる。もちろん同一の消費者であっても購買する商品、時期、予算、他の製品の購買状況によって、惰性的になって同じ商品をリピートしたり、冒険的になって商品のバラエティを求めるようになったりする。しかし、企業としては購買需要全体においてどちらの特徴がより強いかを測定し、顧客割引(優待)の対象を選択することで企業利益を最大にすることが可能である。この仮説をより拡張しモデル化するために、平成26年度においてもさらに研究を進めていき、論文化することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までミクロ経済学やマーケティング関連の膨大な研究実績をリサーチしてきており、その作業は現在にも進行中であるが、現在まで調査した範囲に限っては既存研究には存在しなかった新しい概念を数理モデル化することができたので大きな成果が得られたと思う。 本研究における初年度での位置付けは、4年間の研究期間のうち土台をしっかり作っておくことを予定していたため、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは文献研究を拡張させながら実態調査を実施し、顧客の購買履歴に応じる価格差別の現状を調査していく予定である。顧客の購買履歴に応じる企業の戦略の実態を把握し、産業別に整理する。特に各ケースごとに製品ライフサイクルと製品の普及プロセスを追跡し、消費者の購買傾向(トライアルの後にリピート購買になるのかスイッチ購買になるのか等)を把握する。
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