2014 Fiscal Year Research-status Report
消費者の購買履歴に応じる価格差別戦略の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
25780270
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鄭 潤チョル 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (10439218)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 商業学 / マーケティング経済学 / 応用ミクロ経済学 / ビジネスエコノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には現在までの研究実績を幅広くリサーチし、価格差別戦略、特に消費者の購買履歴に応じる価格差別戦略に関する文献研究を行った。価格差別戦略を競争市場において分析した多くの既存研究では、当戦略が企業にとって不利な利潤をもたらすとの結果を数多く出している。 その大きな理由の1つは、製品が長期にわたって繰り返し販売される市場においては、消費者が将来のことを合理的に判断して購買行動を行うために、企業にとっては初期に過剰な価格競争をしやすくなるからである。この結果は現実において多くの実態を説明しており、かつては新聞・雑誌の定期購読契約や携帯電話の端末機販売市場などから、最近のIT関連の商品、例えば各種ソフトウェア、アプリケーション、ネットゲーム産業などにおいて契約者基盤を増やすために行われる企業間の過剰な価格競争が存在している。 しかし、本研究においては購買履歴に応じる価格差別戦略が本当に囚人のジレンマであるのかに疑問を持ち、もしこの価格差別が企業にとって不利であればなぜ現実にはこれほど多くの価格差別が企業戦略として存在するのかを分析した。理論と現実の乖離を説明するために、消費者の合理的な予想の有無や企業が将来戦略へコミット可能か不可能かを場合分けしたモデル分析を行った。その結果、例えば、製品革新の速度が著しい産業や消費者が自分の将来の選好を予想できない市場等のように、消費者が将来を合理的に予想することが困難である場合には購買履歴に応じる価格差別戦略が実施されやすいことが分かった。さらに、企業が実施可能なコミットメントに関しては、将来の価格を購買履歴に応じて差別しないことを企業が消費者に事前に確約することが可能であれば、価格差別を実施しないほうが有利であるが、将来の利潤のみを最大にしようとする企業は、購買履歴に応じる価格差別戦略を実施しようとするインセンティブが存在する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間の研究期間のうち2年目である今年度における本研究の位置付けは、既存研究と実態分析を通じて購買履歴に応じる価格差別戦略に関して研究されていない部分を把握し、独自なモデルを構築することである。次年度にはこの結果を学会報告やワークショップを通じて内容を発展し、国際雑誌へ投稿することを予定している。まずは2015年6月に開催される国際学会にて論文発表することが既に決定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度からは企業の価格戦略に対する消費者の学習効果と予想が企業の意思決定に与える影響や、ブランド選択に関する消費者の選好・選択行動を分析する。特に過去の購買が消費者に与える影響は、ポジティブな場合(また同一の商品を買いたい)もあれば、ネガティブな場合(前とは異なる商品を買いたい)もあるので、消費メカニズムに関する深層的な文献研究を行い、幅広い市場調査と分析によって実態を把握する。
|